トップ頁 > WEB連載 > WEB連載 民主党政権の化けの皮を剥ぐ > 第2回 問題大臣の化けの皮を剥ぐ

三橋 それにしても、福島瑞穂氏が「少子化担当」なんて嫌がらせかと思いました(笑)。
八木 ご本人はお子さんが一人いるけれど『産まない選択―子どもを持たない楽しさ―』という本の編者をつとめているくらいですからね。少子化推進担当の間違いではないでしょうか(笑)。それに民主党は中学校修了までの子供に一人当たり月額2万6000円の「子ども手当」の支給する政策を打ち出していますが、これら民主党の政策というのはすべて「支出」に関する話ばかりなんです。使うことばかりで、経済成長全体に関する戦略というものがありません。たしかにマニフェストにはもっともらしく、政策を実行するに際していくらお金が必要かということは書いているんだけれど、ではそのお金をどうやって確保するかに関しては具体的なことは何もなかった。「国の総予算207兆円を徹底的に効率化。ムダづかい、不要不急の事業を根絶する」とマニフェストに書きましたが、結果的に1年目とはいえ、概算要求額は史上最大の95兆円。このあとどうなるかは、お手並み拝見というところですが、せめて概算要求の段階から、もう少し何とかならなかったのでしょうか。
三橋 そもそも民主党は成長戦略がないのに、支出を増やすといってきた。「では財源はどうするのか?」となると、今度は「節約します。ムダを省きます」ということを主張したわけです。たしかに、ムダを省けるならその理屈は通ります。実際にやれればですが(笑)。しかし、たとえば公共事業などを「ムダ」として支出を削ってしまえば、いままで支出していた事業で労働をしていた人たちの雇用が消えてしまいますよね。ではその対策をどうするのか。その典型例が八ッ場ダムと川辺川ダムの建設中止です。民主党は「マニフェストに書いてあるから」といって実行するのが既定路線になっていますが、一方でダム建設が中止になったらそこでの雇用はなくなる。その雇用をどうするかに関してはいっさい説明がない。
八木 高速道路の無料化にしても、高速道路を無料化すればそのぶん、フェリー会社や鉄道会社にしわ寄せがいく。利用者が少なくなれば、そのぶん雇用に跳ね返ってくる。その対策はどうするのかなんていっさい語られていない。
三橋 これもアンフェアです。高速道路を無料化することが経済成長のために必要であるというならやってもいいけど、そうではないですからね。私も民主党のマニフェストのなかにも、何かいいところもあるんじゃないかと思って一生懸命探したんですよ。でも、どこにもなかった。ある意味「すごいなあ」と。経済政策の大本が間違っていますから、すぐに破綻せざるをえません。すでにその兆候は見え始めていますが。
三橋 子ども手当も景気対策の一つとしていわれています。しかし、そもそも子ども手当というのは所得移転ですから、支給した手当が使われなければ意味がありません。私だったら、自分の子供のことを考えたらお金がかかる高校、大学進学に備えて貯金しますね。
八木 たしかにそうですね。よほど能天気の親だったら、それをパチンコに使ったりして消費拡大につながるかもしれませんが(笑)。
月額2万6000円の「子ども手当の支給」で民主党に投票することを決めた人はたくさんいると思います。しかし、三橋さんがおっしゃるようにお金がかかるのはむしろ中学卒業後であり、教育にお金がかかり始めたときにはすでに手当てがなくなっている。つまり、生活水準をそこで下げなければならなくなるわけです。はたして国民はそれに耐えられるか。手当てをもらって生活水準が高くなるのはいいけれど、それが当たり前になってしまって、いざストップしたとき、生活水準を下げることなんてできないじゃないですか。
三橋 恐ろしいほどのちぐはぐですよ。子ども手当と農家への個別所得補償で年間約7兆円の財源が必要な計算になります。ではその財源はどうするのか。公共事業を削減するといっても、公共事業の予算規模は現状ですでに約20兆円。これは、もうギリギリまで少ない金額です。それを半分にしたら、既存の橋や道路のメンテナンスすらできなくなってしまう。それなのに必要な部分を削って子ども手当などにまわしても、それによって消費が拡大してGDPが増える保証はない。そういう最悪のシナリオが現時点で見えるわけですよ。
結局、いちばんの少子化対策というのは、じつは経済成長なんです。一人の女性が生涯に出産する子供の数を表す合計特殊出生率は2005年に1.26人でした。それが2006年には1.32、2007年は1.34と少し上ってきている。この時期は小泉政権下からリーマン・ショックの前までの期間と同じです。つまり経済が上向いていると出生率も上がって来るんです。マクロ的に見たら、その相関関係は明らかなんです。ところが、民主党がやろうとしている少子化対策は「保育園をつくります」とか「毎月2万6000円払います」とかいっているけれど、これよりもっとやるべきことがあるんです。結局子ども手当を創設したところで消費が増えるわけではないので、経済成長には結びつかない。経済が成長しなければ子育ての環境もよくならないから、結局少子化対策にはならない。根本的に間違っています。
八木 その財源も増税はしないといっていたわけですから、支出を削るしかないですね。しかし、それにはもう限界があるのはわかってきた。ムダづかいをなくすといっても、せいぜい削って数兆円ですよ。そう言えば、藤井裕久財務大臣はテレビで再三「民主党政権の辞書には経済成長という字はない」といっていましたね。右肩上がりの経済成長は高度経済成長時代の神話でしかなく、これからは経済成長しないという前提で政策を立案しなければいけないということのようです。だったら財源確保はどうするのか。普通に考えれば増税ということになりますが、すでにタバコ税に引き上げや環境税の新設などの話が出ていますね。選挙前まではあれほど増税しないといっていたのですから、その意味でもあの選挙は詐欺だったのはないですか。
八木 ほかにも保育所の増設を政策として民主党は掲げている。「首のすわらない生後2カ月の子供だって預かります」といった具合です。でも生まれたばかりの子供の福祉はどうなるのでしょうか。やはり子供のことを考えると、しばらくは母親が自身で育てたほうがよいのではないか。そういう視点は、ほとんどありません。それに母子加算の復活も同様です。「母子加算が復活すれば、おかずを一品増やしたい。早く母子加算を復活してほしい」なんていう記事が朝日新聞に出ていましたが、みんな「もらって当然」と思っています。このままでは当然財源は底をついてくる。このスパイラルが続いたら、どんどん国民の質が落ちていきますよ。まともに働くよりも、公的扶助に頼ったほうがいい生活ができるとなれば、みんな働かなくなるし、働かないほうが儲かるのであれば、不平不満も溜まってくるでしょう。イギリスが「ゆりかごから墓場まで」の福祉政策を押し進めて、行き着いた先が「英国病」というものだった。福祉に頼り切った国民は堕落していくんです。
三橋 政権交代のために人気の取れる政策をいっぱい打ち出したけれど、最終的に整合性がまったく取れないような状況になってくる。やはり民主党にはグランド・デザインがありませんね。
八木 「民主党が政権を取ったら、これだけあげますよ」と宣伝して歩いているようなものなんですから、「買収選挙だ」といわれても仕方ないですよ。
三橋 増税しないと明言しているうえに、ここまでハチャメチャにやったら、もたないと思います。ですから結局赤字国債の発行しかなくなるわけです。2010年度予算を編成するにあたっても、景気がここまで落ち込んでいますから、税収は2009年度当初見通しの約46兆円を下回るのは確実でしょう。鳩山首相は新規国債発行額を44兆円に抑えたいといっているようですが、はたしてそこに留まれるのかどうか。
八木 すでに2009年度の税収は36兆円とか37兆円という恐るべき数字が挙がり始めました。民主党はうまいこと取り繕って、情報公開しようとしないでしょうから、国民はその実態がわからないままに、数年後、民主党政権が破綻して初めて、その惨憺たる財政状況を知らされるということになりかねませんね。
三橋 別に赤字国債を刷ること自体を非難する気はありません。けれど赤字国債を刷るならば、それはあくまで経済成長を実現するために使うべきです。経済成長さえ実現すれば、政府が借金をしても結果的に経済規模に対する借金の割合が減るので、相対的に負担は減るわけです。ところが民主党はそういう思考はいっさいなしで、とりあえず支出を決めてしまい「あ、足りない」といって国債を刷るよう決めたんですよ。それが露骨にわかるんです。ほかにも雇用対策の強化、最低賃金の引き上げ、温暖化対策、地域の活性化、これはすべてそれなりのお金がかかる。
また、亀井金融担当大臣は中小企業向け貸し出しや個人向け住宅ローンの「返済猶予制度」の導入を位置出しました。これは中小企業向けの貸し出しや個人向けの住宅ローンの返済に関して金融機関に猶予するよう促すもので、中小企業や、個人の資金繰りを助ける狙いがあるとされています。
でもこれは問題の本質を間違えている。たしかに貸し渋りや貸しはがしで中小企業は困っているんだけど、本当に困っているのは需要がないことなんです。ビジネスが拡大しないから、借入金の返済に困っているわけです。だから根本的な問題を無視して「返済しなくてもいい」といっても、これでは銀行が潰れるだけです。結果、地方経済がもっと悪化して、地方の中小企業はますます仕事がなくってしまう。そうすれば雇用状況もますます悪化していくし、そうなれば政府が雇用対策に支出しなければならない額も増えていく。
成長戦略のグランド・デザインがないからこうなるんです。これがもし、成長戦略があって、中小企業がガバガバお金を儲けられるようになるのなら、国債を刷ってもいいわけです。そうなれば皆、お金が儲かるようになるのですから、モラトリアムなんて話は出てこないはずです。
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