トップ頁 > WEB連載 > WEB連載 民主党政権の化けの皮を剥ぐ > 第2回 問題大臣の化けの皮を剥ぐ

八木 いまの世界は否応なくグローバル化しているわけですから、雇用の問題にしても、マニフェストに書いたとおりに最低賃金を時給1000円に引き上げるといえば、必然的に賃金の安い海外に工場移転しようとするでしょう。民主党のいっていることは、たしかに聞こえはいいかもしれないけれど、根本的な問題解決にはならない。逆に日本経済を壊滅状態にしかねない。げんに「鳩山大不況」という言葉がメディアに出始めましたね。
三橋 われわれが所得としてもらうお金の合計がGDPです。ですから、「GDP全体を拡大させて最低賃金を1000円に引き上げましょう」という話ならわかりますが、GDPを増やすことを無視し、もしくは減らすような対策を打ちながら、最低賃金の引き上げをしたら、たんに企業の所得を無理に減らすだけの政策になってしまう。企業としてはそれに耐えられず、生産から逃げてしまうのはやむをえないです。たとえば、「十年後にGDPを10%増やします」と宣言すれば、それでいいんです。GDPが一〇%増えれば自然と賃金水準だって上がる。そうなったとき最低賃金の引き上げを打ち出せば問題ない。
八木 また、民主党は戸別所得補償制度で農業を再生するといっている。これは米などの農産物の販売価格が生産費を下回った場合、差額を国が補填する制度ですが、これも「ばら撒き」です。ばら撒いたからといって、はたして本当に農村が再生できるのか。そんなことよりも農業をいかにして産業として成り立たせるかという戦略が必要なのですが、それは見当たらない。
三橋 自民党の場合は、業界団体にお金をばら撒いていましたが、民主党の場合は個人にばら撒くことになる。それはそれで一つの方策だと思う。ただ、産業を活性化するために、たとえば農業インフラや輸出インフラをどうするのかという思考がまったく抜けたままで、ただ、ばら撒きだけをやる。これは経済政策として成り立ってない。いずれにせよ、日本の農業はたしかに非生産的で、非合理な状態に置かれていることは間違いないので、そこは何とかしなければならないんです。でも相変わらずばら撒きに終始する。自民党のいちばん悪いエッセンスだけを取りだしたのが民主党ですよ。しかも自由民主党の「自由」を取ってしまっている、不自由民主党が、いまの民主党なんです(笑)。
八木 経済問題でとんでもないゴタゴタが続いていますが、看過できないのは、その影で日本を根本的に変える――もっといえば、立ち直れないほどに悪くしかねないさまざまな動きが始まっていることです。
たとえば、2009年9月10日、宮内庁の羽毛田信吾長官が定例記者会見で「皇位継承の問題があることを(新内閣に)伝え、対処していただく必要があると申し上げたい」「皇室が安定的に続くかどうかという問題が存在するという意識は、政権が変わっても変わらず持っている」と発言しました。民主党政権ができたら、早い段階で安定的な皇位継承について要望したい、つまり当然、女帝・女系天皇容認の動きなんです。すでに2009年1月から宮内庁のなかに研究会が設置されて、女系容認の検討が始まっている。2005年に鳩山首相が出版した『新憲法試案』(PHP研究所)のなかでも鳩山さんは女帝を認めており、「皇位は世襲のものであって、国会の議決した皇室典範の定める継承順位に従い、皇統に属する男子または女子が継承する」という改正案を打ち出しています。おそらくこの路線で鳩山政権下でも皇室典範改正の動きが出てくるのではないか。この本を読む限り、皇位継承とはいかなるものなのか理解はしているみたいです。そのうえで「しかし、それにもかかわらず、われわれは女性の天皇を認めるべきときに来ているのではないか。男女平等の理念もさることながら、これは皇位の永続性が懸念される事態は避けたいという、天皇制の存在意義を積極的に見いだす立場からする現実的な判断である」と述べている。そのことを考えても、当然民主党政権で女系容認の皇室典範改正という動きも出てくるでしょう。
じつは麻生政権時代にも皇室典範改正の動きがあったんです。これは女系容認ではなく旧宮家の皇籍復帰の路線で法案作成寸前まで進んでいたのです。ところが当時の漆間巌官房副長官が「天皇陛下が反対されています」といってその阻止をし始めたんです。もちろんその動きは宮内庁と連携していると見るほうが自然でしょう。しかし私が、さるきわめて信頼できるルートで確認したところによれば、それは大御心ではない。天皇陛下は旧宮家の皇籍復帰に反対ではないんです。官僚というのは目的によっては大御心ですら捏造するんですね。いずれにせよ、いまの宮内庁長官の考えと、鳩山総理の考えが合致すれば、女系容認の皇室典範改正という動きになるのは間違いないと思います。
三橋 民主党の皇室観がはからずも露呈したのが、岡田外相が天皇陛下の御言葉に「意見」した事件ですね。10月23日の閣議後の閣僚懇談会で、「陛下の思いが少しは入った言葉がいただけるような工夫を考えてほしい」「大きな災害があった直後を除き、同じあいさつをいただいている。国会に来ていただいているのだから、よく考えてもらいたい」と発言したといいます。
八木 非常に「不遜」な発言ですよね。「政権交代おめでとう」とでもいってもらいたかったんですかね。天皇陛下は、10月26日の臨時国会の開会式で、従来どおりの御言葉を下さいました。当たり前です。天皇陛下は政治的、党派的な発言をなさらぬように心がけておられるのですから。そんなことも知らずに言い放った岡田氏の発言はあまりに傲岸不遜。三橋さんがおっしゃるように、皇室観がはからずも露呈した局面といえるでしょう。
三橋 それから、やはり強烈だったのは千葉景子法務大臣ですね。彼女は社会党左派出身で、菅直人副総理などとともに横田めぐみさんを拉致した実行犯の辛光洙の釈放嘆願運動に署名しています。それ以上に強烈なのは、彼女は外国人参政権付与を呼びかけた張本人ということです。また、2008年、改正国籍法が参議院法務委員会で審議にかけられた際に、自民党の丸山和也議員が反対の答弁をしようとしたのを無理やり止めさせて、審議を強行に進めてしまったという過去があります。そして、法務大臣になったいま、人権侵害救済法案の推進も、夫婦別姓の推進も表明している。ヘタしたら福島瑞穂氏よりもすごいですね。
八木 小沢一郎幹事長の西松事件や鳩山首相の故人献金疑惑がまだ解決していないなか、法務大臣の指揮権発動について「慎重にしなければならないが、検察の行き過ぎがあれば指揮権の発動は制度としては認められている」といって、指揮権発動を否定しなかった人です。つまり検察はあくまで法務行政の一機関だから、法務大臣として直接指揮権を発動することも、場合によってはありえると、踏み込んだ発言をしているんです。これは指揮権発動どころか、検察を使ってあらゆる人を犯罪者に仕立てることができると法務大臣自らいったようなものなんです。そういうことにつながりかねない。
しかも、この人は弁護士出身でかつて社会党の副党首を務めたこともあります。先日、ある社民党の政策スタッフと仕事で一緒になったのですが、民主党が誕生したときに、社会党のなかの最左派の社会主義協会のスタッフがそのまま民主党にスライドしたということを教えてくれました。私はいいチャンスだと思ったので、そこで「彼らはまだ暴力革命路線って諦めてないんですか」と聞いてみたら、「さすがにそうはいっていない。平和革命といっている」と。「平和革命とは何ですか」とさらに聞いてみたら、「平和革命とは国会で議席を得て、社会主義体制にもっていくのだといっています」というのです。まさに、「ほら、やっぱり」という話です。そして彼らの親分格が千葉景子氏ということになる。それがよりによって法務大臣ですから何をしでかすかわからない。
三橋 自民党の人権擁護法案のときは法務省の外局でしたが、民主党の人権侵害救済法案の場合、人権侵害救済機関が内閣府の下に置かれる外局になる。つまりより権限が強化されているわけで、これは自民党案よりもデンジャラスなんです。
八木 救済機関は法務省でなく、各省庁に睨みをきかすことのできる内閣府の外局としているのと同時に、救済機関を中央省庁だけでなく各都道府県にも設置しようとしている。これはまさに民主党の支持団体である部落解放同盟の主張をそのまま採り入れたものです。いまの状況は部落解放同盟が与党として政権入りしたのと同じですからね。しかも先ほども申しあげたように、人権侵害救済法案はマニフェストにも入っているわけですから、「これは国民の命令書だ」ということで絶対に実行してくるに違いない。
ほかにも千葉法相は「捜査の可視化」についても言及していますね。警察の取り調べの様子をカメラで撮影して、本当に自白したのかどうかをあとでチェックするというものです。いままでは調書だけでしたが、それに映像が加わることになる。映像に撮ることで、つねに取り調べる側を監視しようとする。つまり犯罪者の人権を守ろうということですね。
三橋 つまり概ね検察や警察といった国家権力は、横暴で悪の存在だという発想があるわけですよね。そうすると、警察としてはまともに取り調べできないでしょう。少しでも威圧的と捉えられる場面があれば、すぐに「人権侵害だ」とされてしまうから。
八木 一方で警察や検察の権力を弱めておいて、他方で人権侵害救済機関を設けて、そちらでやりたい放題やる。おそらく人権侵害救済機関は不可視化なのでしょうね(笑)。ほかにも彼女は死刑廃止議連のメンバーの一人ですね。死刑執行に関しても慎重に対応すると言明しています。
三橋 自民党の人権擁護法案のときは、メディア規制の項目が入っていたためにメディアが猛反対して潰れましたけれど、今回はどうでしょう?
八木 人権侵害救済機関と称して、民間の団体も加わることになれば、事実上の別の司法機関ができて、それによって逆に人権が侵害されることだってありうる。その暴走をチェックすべきですが、新聞の見出しを見ても、そのことに触れているところはありませんでしたね。
先行きの見えない現在、ビジネスパーソンに求められるスキルとは?
2010年3月期から早期適応が始まる「IFRS (新国際会計基準)」。日本企業の会計処理を大きく変えるといわれるなか、われわれが意識すべきことは?藤沼亜起氏(前・日本公認会計士協会会長)にお話をうかがった。
夢の自動車「燃料電池車」が一般家庭に普及するのはもうしばらく先になるようだが、「燃料電池」自体は家庭に導入される日が近づいてきている。いよいよ「燃料電池時代」の幕が開こうとしているのだ。
質の高い眠りを得るためには、どのような寝具を選ぶのがよいのでしょうか。そのポイントを伺いました。
戦後日本の繁栄と平和を良くも悪くも育(はぐく)んで来た自民党。その政権が崩壊し民主党政権が誕生したことは、社会の閉塞感を何んとかしたいという国民(有権者)の意志の表われだが…。
木内博一 (農事組合法人「和郷園」代表理事)
かつてないほど農業に対する関心が高まるいま、カリスマ農業経営者が「農」を通じたほんとうの日本活性化策を語る!
第1回 なぜいま「農業ブーム」か
八木秀次(高崎経済大学教授)/
三橋貴明(評論家、作家)
本当は恐ろしい外国人参政権問題、人権擁護法案問題……。うっかり政権を任せてしまった日本国民の暮らしは、未来は、どうなる!
第2回 問題大臣の化けの皮を剥ぐ
野口悠紀雄(早稲田大学教授)
「オフショア」「タックスヘイブン」の姿を知ることで、日本経済の問題点と進むべき道が見えてくる!
第2回 タックスヘイブンは存在悪か?
トップ頁 > WEB連載 > WEB連載 民主党政権の化けの皮を剥ぐ > 第2回 問題大臣の化けの皮を剥ぐ