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民主党政権の化けの皮を剥ぐ 三橋貴明(作家、経済評論家)

マスコミの一社が寝返る日

 八木 選挙の際には民主党は、国民受けしそうな霞が関改革と人権侵害救済機関の設立みたいなものとを抱き合わせで出してきたわけです。マニフェストを読めば明らかです。マニフェストは選挙で国民の承認を受けた、だからもうあとは白紙委任ですよということを主張している。現在の日本国民は、かつてナチスに白紙委任をしたドイツ国民のような状態に置かれてしまったことになります。

 さらにこの先、マニフェストだけではなく、「民主党政策集INDEX」にのみ出ていたものまで、どさくさに紛れてどんどんやるとするならば、それは明らかに詐欺といっていい。

 国民にとって、マニフェスト選挙なるものの真の怖さがわかったのは、今回が初めてだと思います。ほとんどの人がマニフェストに何が書いてあるか細部まで知らずに投票したわけですが、当選した政治家は、「マニフェストはすべて承認された」といって、それを好きに使い、さらにそれ以上のことを仕掛けてくるわけです。

 三橋 A4一枚ぐらいだったらいいんですけどね。そんなに細かく書かれると、保険の契約書じゃないんだから、読めるわけないですよね(笑)。

 八木 民間会社の契約書の場合は、ある程度信頼関係でやっていますし、あまりに悪辣な業者は取り締まってくれる機関もある。しかし、「マニフェスト独裁」を取り締まる機関はありません(笑)。

 三橋 そこが非常に問題なわけです。現在の民主党政権の場合、対抗勢力をどう今後立て直していくかというところが重要になってくるかと思うのですが、その辺はどうなんでしょうか。

 八木 その話題になると口が止まってしまうということですね(笑)。

 三橋 しかし、戦略は単純なんです。民主党に投票せずに、自民党に投票した人びとが2800万人近くいます。この人たちにどうメッセージを届けるかという問題に尽きるのではないでしょうか。そういう人びとにメッセージを伝えるチャンネルをつくればいいだけです。たとえばマスメディアは自社の業績がかかっているわけです。マスコミの一社が寝返って、「この2800万人をターゲットに商売をする」という方針を打ち立て、まっとうな情報が国民に届くようになれば、民主党も好き勝手なことができなくなるはずです。

 八木 総選挙で、自民党がなぜ負けたのかという分析の一つとして、自民党がイデオロギー政党になったからだということをいう人がいます。もっと自民党は幅広い国民政党であったはずなのに、ここのところ保守主義のイデオロギー政党になったから、国民が愛想を尽かしたというわけです。そんな「何かわかったようなこと」をいう人がいると、「たしかにそうなのかなあ」と思わされてしまう人も多いかもしれない。しかし、私はそういった分析は間違っていると思います。

 自民党が負けた理由は、やはり「何をしたいのかよくわからない、基軸がはっきりしない」ということなんだろうと思うのです。つまり「イデオロギーがはっきりしない」ということこそが敗因だったと思うのです。イデオロギー政党になどなっていなかったわけです。

 だから、民主党がこれだけ中道左派の線を強く打ち出している以上、やはりその対立軸としては、保守色を打ち出すべきだと思うのです。この15年ぐらいのあいだ、国民は保守的なイデオロギーにシンパシーを感じていた。だからこそ、いろいろな不祥事がありながらも自民党にけっこうな票が入っているわけです。従って、もっと鮮明に、明確に保守のイデオロギーを打ち出したらいいと思います。

 しかし現実的には、むしろ自民党が、「民主党」的な中道左派のイメージに必要以上に擦り寄った感じを受けます。支持率などばかり気にして、国民の支持を後追いしようとする姿勢の悪い面ばかりが際立っている気がします。

ネットユーザーは「支持率が逆転」

 三橋 八木さんがおっしゃったように、もし自民党がイデオロギー化したから負けたのだったら、もっと差が付いたはずです。そもそもマスメディアの事前の世論調査だと、小選挙区で自民党は民主党にトリプルスコアで負けているはずでした。しかし、実際に投票数を見ると、9対10というところです。

 選挙戦の過程で、自民党が民主党の国旗引き裂き事件を批判したビラを配ったとか、反民主党のパンフレットを配ったなどということがありました。しかし、あのパンフレットは誰が配ったのか。それを思い出してほしいんです。あれは一般の有権者が自らボランティアとして参加して配ったのです。若者を中心に、そのとき動いた人が数百万人いるわけです。ほとんどインターネットで情報を交換しながら、ボランティアでパンフレットを配ったのです。そういうパワーがあったからこそ、逆にあそこまで自民党が盛り返したんだと思います。まったく何もしないで、放っておいたら、本当に得票数でダブルスコアで負けたかもしれません。民主党が4000万票、自民党が2000万票ぐらいになってもおかしくなかったのです。

 八木 しかも、そのようなパンフレットに書かれていたことは全部本当のことだった(笑)。

 三橋 嘘を書いているわけではありません。しかし、こうした有権者の行動を、テレビが「ネガティブキャンペーンだ」とレッテルを貼って、報道したわけです。しかし、この種のマスコミの報道自体が、こうした運動に対するネガティブキャンペーンなのです。したがって、問題はマスメディアだということになってくるんだろうと思います。

 今回、記者クラブが開放されたら、民主党はもしかしたら一つだけいいことをやることになったかと思ったのですが、結局、実行しないので、やはり話を戻すようですが、マスメディアを何とかしなくてはならないと思います。

 先ほど、指摘しましたが、実際問題として、自民党の味方というか、反民主の勢力といいますか、そうした人びとがマジョリティとして存在している。その人たちにきちんとした情報が届くようにしなくてはならない。とくに人権侵害救済機関の危険性など、一般国民はほとんど知りません。

 八木 メディアが全然報じないですから、一般国民はわからないですよね。

 三橋 しかし、インターネットを使っているわれわれの世代の人は、みんなこうした闇法案の危険性を認識しています。その世代だけのアンケートを見ると、支持率において自民党が民主党を上回っているのです。じつはいちばん人気のある政治家が麻生さんだった。もっと驚いたのは、10代になると、鳩山さんに比べて、麻生さんが圧倒的に人気があったのです。人気という点で、鳩山さんと麻生さんを比べると1対4とか、1対5という結果がでてくるのです。マスメディアが何をいおうとも、こういう現実があるのです。ボトムアップで、こういう風潮が生まれているので、これを利用するべきだと思います。

 自民党は、もし次の選挙で勝ちたいのなら、こうした勢力を利用しなければいけないし、利用しなければ勝てないと思います。もう一度安倍さんにご登場いただくのもいいのではないでしょうか。

自民党は思い切って若手を新総裁にすべきだった

 八木 しかし、自民党のなかではそういう動きが鈍いですね。もちろん安倍さんご自身はやる気をおもちだと思いますが、党の中堅より下からすると、むしろ安倍さんこそが自民党惨敗の戦犯の一人と思っている節があります。自民党の人気を下げたと思っている人も多いようです。

 三橋 やはり自民党に国民の声を直接届けることも必要ですね。そういう声を自民党に届けないと、自民党自体が現実を理解できないでしょう。何がニーズなのかというのをもっと分析し、拾い上げていかなくてはならないのですが、そういうマーケティングをいっさいやらないでいるのが、自民党の問題点ですね。私は、そういう活動でちょっとお役に立てればなということでいろいろやっているのです。

 八木 自民党は思い切って40代半ばぐらいの若手の人を、新総裁にすべきでした。それだけで注目集まるわけですから。さんざん見飽きた顔を出されたところで、国民の関心なんか呼ばない。だから、見た目もよくて、それで政治信念もはっきりした人を出せばいい。たとえば、小選挙区で勝った稲田朋美さんでもいいし、古川禎久さんでもいい。

 私は古川禎久氏を買っています。彼はものすごい尊皇家で、じつに政治思想がしっかりしている。経歴もいいですよ。ああいう若手の政治家をポンと担げば、国民の注目を浴びます。そもそも、イギリスでも負けたほうの政党は、次の党首に若い政治家を担ぐわけです。いまの保守党のキャメロン党首は四十三歳ですが、いまや堂々たる風格で、次の総選挙では保守党が勝つと見られています。政権に復帰するまでに、若手を次の総理候補として党首にして育てていくわけです。

 三橋 谷垣さんは「ちょっと、ないなあ」という印象だったのですが(笑)。「麻垣康三」でしたか、そのうちの最後の一人ですよね。結局順繰りに出てきた感じで、印象が悪すぎると思います。

 八木 谷垣さんは今回の総裁選では八月十五日に靖国神社に参拝するとか保守色を出してはいますが、もともとリベラルな人ですからね。ですから、いまや日本はリベラル二大政党制になったように見えてしまっています。対立軸をはっきりさせないで、ばらまくお金がどちらが多いか、少ないかというような、それぐらいの差しかない体制のようになっていますね。

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