トップ頁 > WEB連載 > WEB連載 民主党政権の化けの皮を剥ぐ > 第2回 問題大臣の化けの皮を剥ぐ

八木 民主党は選挙前から「マニフェストに書いたことを実行します」と連呼していましたね。そして、鳩山政権が誕生して具体的な政権運営が始まったあとも、とにかく彼らは「マニフェスト、マニフェスト」と言い張って政権運営を行なっています。長妻昭厚労相が、2009年9月17日に厚生労働省に初登庁したときに、職員を前にジャケットのポケットから出したマニフェストを掲げながら「政権が交代したいま、ある意味では、国民と新しい政府との契約書、あるいは命令書と考えてもよいと思う」といったのは象徴的なエピソードでした。
千葉景子法務大臣もマニフェストに載っているからという理由で人権侵害救済法案の制定に向けて動いています。人権侵害救済法案についてはマニフェストの後半の「政策各論」に掲げられている「6、消費者・人権」の項目のところ、50番目に「人権侵害救済機関を創設し、人権条約選択議定書を批准する。具体策として、内閣府の外局として人権侵害救済機関を創設する」と書いてある。
でも、民主党のマニフェストを熟読して投票した人が何人いるのかという感じですよ。マニフェストのこの部分には賛成だけど、この部分は反対だという人もいるでしょうし、書いてあることの意味がわからない場合も多い。国民の多くは、「マニフェストにはいろいろ書いているけれども、それはこれから議論して慎重に具体化していくものだ」くらいに受け止めていて、選挙が終わった途端にやみくもにそのまま実行するとは思っていなかったのではないでしょうか。マニフェストは知っていても、「民主党政策集INDEX2009」の存在は知らない人が圧倒的多数だし、民主党を積極的に支持したというよりも、自民党があまりに酷いので、懲らしめるために民主党に入れよう、と考えた人のほうが多かったのではないかと思います。
何もマニフェストに書かれていることをすべて承認したわけでないし、民主党に白紙委任したわけでもない。ところが蓋を開けてみたらこのザマですよ。最近ではマニフェストに書かれていることばかりか、書かれていないこと、「民主党政策集INDEX2009」に書いたことまで強引に実行しようとしていますね。
三橋 人権侵害救済法案について書いてあるなんて、はじめ読んだときは気付きませんでした。あのマニフェストの冊子のいちばん最後の、細々書かれた項目のなかで書かれているんですね。こういっては悪いですが、あまり読まれたくないから、あんな小さな字で書いたとしか思えない。一方で、外国人参政権に関してはマニフェストには載っていませんでした。ですからマニフェストに載っていない外国人参政権付与に関して民主党は行なわないはずだけれど、11月7日の『産経新聞』は、民主党の山岡賢次国対委員長が、自民党の川崎二郎国対委員長と会談し、永住外国人への地方参政権付与法案を議員立法として国会提出したいと伝えたと報じています。小沢一郎幹事長も賛成派ですし、可決してしまう可能性も高いといいます。このようにマニフェストに載っている政策だけでなく、マニフェストには載っていないけれど「民主党政策集INDEX2009」に載っていることも恣意的にどんどん進めようとしている。
あと岡田克也外相が11月末を目処として「核密約」の真相を明らかにするよう調査命令を下しています。普天間基地移転問題をめぐるドタバタもありますし、今後いったい日米関係はどうなっていくのか。アメリカの核の傘から日本は離れるということにつながっていくのではないかということも不安です。
八木 穿った見方をすれば民主党を応援する日教組や自治労の意向なのか、要するに北朝鮮や中国への配慮なのかという話になる。本当に好き放題ですよ。ほかにも民主党は2003年に定めた政権運営基本方針で「官房機密費の流用を厳格に制限し、使途は厳正な公開基準の下で一定期間後に公表する」として情報公開を行なって透明性を確保しようといっていたわけです。ところが政権を取るとすぐに、そんな方針はまるでなかったかのような顔です。就任直後の9月17日の記者会見で、平野博文官房長官は「そんなものがあるんですか」と語ったわけです。前任の河村建夫氏から引き継ぎされていたことがばれると、11月5日の記者会見では「報償費は知っているが、機密費は知らないから答えなかった」(『毎日新聞』)。官房機密費は正式には内閣官房報償費というわけですが、「機密費という概念では承知していない」が、「引き継ぎについては『報償費という概念で受けたから、これについては承知している』」(『毎日新聞』)と答えたというのです。まるで子供の言い訳です。さらに同じく11月5日の記者会見で「『報償費という性格上、少なくとも相手があることだし、オープンにしていくことは考えていない。私が責任をもって適切に判断しながら対処する。発表は差し控えたい』と語った。前政権からの引き継ぎの際の残高についても『発表は差し控えたい』」(『朝日新聞』)と述べています。まさに「金は握った、そして権力も握った、あとは知らない」という感じです。これじゃ、まるで詐欺でないですか。大変ですよ。
八木 じつはいまの日本国憲法下の議院内閣制度では内閣総理大臣にものすごい権限を与えているんです。しかし、これまでは縦割り行政で官僚が各省庁でバラバラになっていた。事務次官会議があってそこで承認されたことだけが閣議に掛けられてもいた。いろいろ批判はあるのですが、要するに官僚の力が強くて内閣総理大臣といえども好きなことはできなかった。また、自民党には部会があって、内閣提出法案であっても、そこで承認されなければ出されなかった。族議員も含めて党内で議論されていたわけです。それらがお互いにチェック・アンド・バランスの効果を発揮したのですけれども、民主党政権下の「政治主導」はそれらを否定して憲法の規定どおりに、内閣総理大臣による非常に強い権限行使を行なおうとしています。衆議院でも与党が圧倒的多数を占めていますから、党執行部と緊密に連携していけば、もはや怖いものなし。マニフェストに書かれていることも、書かれていないことも、何でもできる仕組みができあがっているのです。
三橋 自民党政権の末期のころは、「諮問会議政治」とでもいいましょうか、男女共同参画にしても郵政民営化にしても皇室典範改正にしても有識者会議を開いてそこでの決定によって強力に政策を推進していく姿がありました。しかも、そこには官僚が恣意的に関与する面もありましたから、それはそれで懸念の声がありましたが、しかし、今度は政治権力が好き放題をはじめている。
八木 いまの「政治主導」にはチェックも働かない。民主党は小沢一郎幹事長の独裁状態ですし、その党が国会の多数を抑えているのですから、国会で民主党をチェックするのも限界がある。しかもマニフェストに書いてあること、書いていないこと、何でもやる。それが政治主導だというのですから、これでは国会の意味がないじゃないですか。国会は議論の府であって、議論することによってよりよき法案にしていくんです。今のままだと政府に入っていない民主党の国会議員の仕事は政府提出法案の、たんなる賛成要員です。手を挙げる係です。何のために国会議員になったのか。
三橋 マニフェストに入っていない公約の一つに「記者クラブの開放」がありました。それについてあるフリージャーナリストが「なぜ記者クラブの開放」をマニフェストに入れないのだ」と質問したら、「そんなの当たり前だ。民主党の記者クラブはすでに開放しているじゃないか。当然われわれが政権を取ったら、内閣や首相の記者会見も全部オープンにするよ」と民主党の首脳はいっていましたね。ところが、これに関してはいきなり翻しました。
結局、マスメディアとのある種の合意みたいなものができたわけですね。おそらく大新聞をはじめ既存メディアの圧力があったんでしょう。「もし、本当に記者クラブを開放したら、何を書くか知らないぞ」という(笑)。それで、ネットメディアやフリーランス記者への開放は見送られた。一応外国メディアには開放されたけれど、そもそもネットやフリーランスを入れない時点で公約違反です。けれど彼らは「マニフェストに書いてないから」ということで突っぱねるのではないですか。まあ、それ以前に記者クラブ問題に関して既存メディアは絶対に報じようとはしませんけどね。記者クラブの開放を主張し、民主党を応援してきた上杉隆さんの努力もムダだったということです。私も民主党のマニフェストはほとんど評価していませんでしたが、記者クラブの開放という話に関しては評価していたんですよ。記者クラブの開放により既存メディア以外のネットメディアやフリーで活動している人が、直接首相や閣僚に取材できるようになるので、いまの「マスゴミ」といわれるような閉塞的な言論空間を打破する大きな力になると思っていた。ところがいきなり撤回されたので、もう唖然です。
八木 さらに鳩山政権は、官僚が記者会見を行なわないようにしようとしている。でもこれは民主党が声高に主張している「透明性」や「情報公開」といった題目に反することです。官僚が発信しなければそのぶん、国民への情報の発信量が減るわけですからね。
三橋 あまりに一気にそのような動きがきたので少し驚きました。私がかねてより懸念していた「情報のコントロール」の問題が、自民党政権と同じ程度というより、むしろ、ますます酷くなっていく。
民主党の体質を表す一つの例ですが、麻生内閣の時代の首相官邸のウェブサイトには、トップページのいちばん上のところには国旗が写った写真が置かれていて、トップページの左列の真ん中あたりに「天皇陛下御在位二十年」というバナーがありました。ところが、この国旗と「天皇陛下御在位二十年」のバナーが、鳩山政権誕生直後にいったん消えてしまったんです。「なんだ、これは」と思ってあわてて画面をキャプチャーして保存したんですが、それが17日昼過ぎには元に戻っていたんで、大笑いでしたよ。抗議が殺到してあわてて元に戻したのでしょうか。これはいまの民主党の体質を表す決定的な点だと思いました。さすが「国旗を切り刻んで党旗をつくって恥じないところだけはある」とね(笑)。
八木 あまりに露骨でしたね。民主党の事務方には旧社会党を支えた社会主義協会出身者がたくさん残っているということが影響したのでしょうか。あるいは連立を組んでいる社民党への配慮というのもあるのかもしれない。おっしゃるとおり、さすが日の丸を切り刻む党ですよ。9月18日の産経新聞によると、9月16日に首相官邸で行なわれた首相官邸での記者会見で会見場に設置された国旗に一礼したのは18人中7人だったそうです。福島瑞穂消費者・少子化担当相は一礼というよりは会釈程度でしたが、亀井静香郵政改革・金融相、岡田克也外相らは国旗前を素通りして登壇しました。
三橋 それに対して平野官房長官は「『あ、そうですか』という感覚だ。(一礼を)閣僚としての責任ある対応をされればいい。一礼しろと閣議決定したわけではないし、申し合わせをしたわけではない」といっている。空恐ろしいほど幼稚なレベルですよね。
八木 それにもかかわらず、政権発足時の内閣支持率が7割を超えました。国民の多くは民主党の正体を知っているのか、これからどんな政策が飛び出てくるのを知っているのか。この国は本当に大丈夫かと思わざるをえませんでした。
三橋 じつは今回の選挙で民主党はたしかに自民党に議席数では圧倒的な差を付けましたが、小選挙区の得票数は民主党3347万票で自民党2730万票、得票率の差は8.5%でしかなかったんです。だから得票率にして、わずか4.3%の有権者が動いただけで、結果はひっくり返った可能性だってある。それに郵政選挙のときの自民党と民主党の得票率の差より、今回の選挙のほうが、差が縮まっているんです。
八木 その高支持率を背景に、マニフェストに書いてあることをごり押しし、岡田外相のように、書いていなかった「核密約」まで暴走しようとしているのは、やっぱり腑に落ちませんね。
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