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バイオ燃料をいかに導入するか

 消費段階での取り組みの一つとしては、政府の要請に基づく、バイオ燃料の導入がある。バイオエタノール36万キロリットル(原油換算で21万キロリットル)を、既存の石油供給インフラ設備が利用可能な「ETBE方式」で導入していく。ETBEとは、バイオエタノールにイソブテンという石油系のガスを合成させたものである。エタノールを直接混合したガソリンに水が混ざると、ガソリンとエタノールが相分離を起こし、ガソリンのオクタン価が下がるなど品質が劣化してしまうが、ETBE方式であればその心配はなくなる。また、エタノールのようにガソリンの揮発性を高めることはなく、揮発性も通常のガソリンと同レベルであり、光化学スモッグを引き起こす危険性も小さくなる。

 政府からは導入目標の拡大が要請されているが、われわれとしては、ユーザーの利便性と環境への配慮から、3条件(ETBE方式、供給安定性確保、財政支援)を前提として、原油換算50万キロリットルを上限に、最大限の努力をしていきたいと考えている。

 だが、そもそも、バイオ燃料を確保するために、ジャングルを潰して原料となるサトウキビをつくったのでは本末転倒である。LCA(ライフサイクルアセスメント)によるガソリンとの比較で、ガソリンに比べCO2削減効果が50%以上という基準を満たすバイオエタノールの調達先は、既存農地で生産されたブラジル産サトウキビに限られているが、ブラジル一国に供給先を頼るのは、天候の影響など、不安定要素が多い。

 さらにいえば、世界の人口は2、30年後には、おそらく現在より10億以上増えている。加えて、社会が豊かになると、肉等の消費量が増えるため、食糧として利用可能な飼料の消費量は飛躍的に進む。世界的に食糧事情が逼迫(ひっぱく)してきた場合、もし日本が金にあかせて、自分たちの燃料のために他国で食糧となるべきものを買いあさっているような図式になってしまったら、国際的な非難が殺到するおそれがあるのではないか。

 バイオ燃料に自国の農産物を使うならいいかもしれない。だが、日本のバイオエタノール自給率はわずか数%程度しかない。バイオ燃料導入に積極的な欧米では、国内農業振興とエネルギーセキュリティー確保のため、自国内での生産消費(国産国消)が原則なのである。

 そのほかにも、反応性の高いアルコールを扱う難しさや、バイオエタノールを生産する過程で水を大量に必要とするなど、さまざまな課題がある。バイオ燃料が出はじめた当初は、理想の解決策のようにいう人もいたが、現実的にはそう簡単ではないし、製造プロセスなどをトータルで考えると、温暖化ガスの削減効果を疑問視する評価も出てきている。

 製造物責任、安定供給の責任の面から、私どもは慎重なうえにも慎重にならざるをえない。それゆえ、ETBEといういちばん安全な方法で、少しでも無駄な設備投資を省きつつ、着実に進める努力をしていきたいと考えているのである。

 バイオ燃料については、海藻を使うプランなど、さまざまなアイディアはあるが、実用化しているものはほとんどない。たとえば、海洋で大規模にバイオ燃料用に海藻を栽培したとして、生態系や海洋環境に悪影響を及ぼすことはないのだろうか。工業生産と違い、生態系の変化は予測がつきにくい。そう簡単に人間の思うようにいかないのではないかという気がしている。本来ならば、限られた経営資源は燃料電池や水素の研究開発など、真に技術開発を中心とした次世代のエネルギー分野にもっと振り向けてもいいのではないか、とも考えられよう。

今後のバイオ燃料の導入(予定)

クリーンディーゼル車の普及を

 またもう一つ消費段階での取り組みとしては、クリーンディーゼル乗用車普及にも力を入れたい。じつはディーゼル車はガソリン乗用車より3割ほども燃費に優れ、結果として温暖化ガス排出削減にも貢献しうる。問題は、排ガスなどであるが、これをクリアした「クリーンディーゼル乗用車」を推進したいと考えている。すでに石油業界は排ガスの処理に問題があるとされた硫黄分に関し、国の規制を前倒しして、2005年からガソリンと軽油のサルファーフリー化(硫黄分10PPM以下)を実現している。サルファーフリー軽油は、排ガス触媒の機能を低下させる硫黄分がほとんどないため、排出ガスを大幅に改善することができる。さらに、サルファーフリー燃料の導入により可能となる新型エンジンや排ガス後処理システムを搭載した乗用車の普及が進めば、相当量のCO2削減が期待できるのだ。

 ヨーロッパでは、新車販売に占めるディーゼル乗用車の比率はすでに5割を超えている。日本でも、全乗用車に占めるクリーンディーゼル乗用車の保有台数比率が10%になれば、運輸部門で約200万トンCO2/年の削減効果があると試算されている。運輸部門のCO2削減対策が求められているわが国でも、普及に必要な環境がすでに整備されていて、既存技術よりそうとうなCO2削減を実現できるクリーンディーゼル乗用車の普及が強く望まれる。

 さらに、消費者段階での取り組みとして、廃熱利用にすぐれ、灯油を節約できCO2排出量を抑えた高効率石油給湯器(エコフィール)や、石油を利用した燃料電池を普及拡大していく。燃料電池はエネルギー効率が高く、環境負荷が低い。燃料電池は発電のために水素を使うが、その水素を灯油やLPGから供給しようというのである。石油利用燃料電池は、既存の石油供給ネットワークを利用することが可能であり、国内での広範な地域での普及が期待できる。

めざすべき革新的技術

 以上のような施策を打つ一方、2030〜2050年という長期的展望での革新的技術開発をめざして取り組んでいる。

 その一つは超臨界水を用いた重質油分解技術である。従来、重油の分解のために水素を利用し、そうとうのエネルギーを用いてきた。この水素の代わりに、高温高圧状態の超臨界水を利用しようという技術である。超臨界水とは、蒸気と液体の中間の性質をもった水で、水蒸気のように分子のなかに入り込み分解しやすくし、従来の水素化分解よりはるかに少ないエネルギーで重油を分解することができるのだ。

 もう一つは炭化水素膜分離・吸着技術である。ナフサやLPGから水素を取り出すのに、現状では高温高圧の状態にし、多くのエネルギーを必要とする。それを分離膜で行なうと、そうとう少ないエネルギーで可能となる。そうしたことを効率的にできる技術に期待がかかっている。

 二酸化炭素回収・貯留技術(CCS)も期待がもてる技術である。石油から水素を取る過程で出てくるCO2は、非常に純度が高い。その純度の高いCO2を回収し、油田やガス田に安定的に貯留する技術、あるいは原材料として有効利用(固定化)することをめざすのだ。こうしたことが経済的かつ効率的に実用化できれば、石油を利用しつつ、低炭素社会を構築することができるであろう。

 世界最高水準のエネルギー効率を誇るわが国の石油業界の知識や経験は、途上国の低炭素社会実現にも活用させることができる。関係機関の協力のもと、途上国からの人材受け入れや技術交流を積極的に進めて、世界に貢献していく努力をしていきたい。

石油の役割は終わらない

 わが国においては、燃料としての石油の需要は減っており、温暖化ガスの削減も問題になるなかで、石油の役割自体が終わったなどと、乱暴なことをいう向きもある。だが、それは早計である。燃料として、これほど供給弾力性があるものはまずほかにないし、のみならず、石油を炭素の塊とみるなら、これほど便利な原料資源もまた、ほかにないからである。

 たとえばナノチューブや炭素繊維も、その原料は石油である。アメリカがいまでも石油に固執しているのは、たんなるエネルギー資源としてだけみているわけではない。科学技術が発展すればするほど、使い道はいろいろ出てくる。メタンや、石炭などを使った化学品は昔からいろいろ研究されてきたが、現実にこれだけ容易に応用できる原料資源としての石油に勝るものは、ほかにないのである。

 石油精製分野における技術は簡単にみえて、革新的な技術開発はなかなかない。原理的な理論があっても、実際の技術が追いつくのは時間がかかる。だからこそ、粘り強く、試行錯誤を繰り返す努力が必要である。われわれ石油業界も、よりよい社会づくりに貢献すべく、最大の努力を傾けたいと考えている。

(提供=石油連盟)

石油連盟

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