――エネルギー安定供給と環境保全の両立をめざして
畑 伸夫(はた のぶお) 石油連盟常務理事
略歴:1974年3月、早稲田大学政治経済学部卒。同年4月、石油連盟入局。
温室効果ガスの削減など、環境問題に注目が集まるなか、石油はともすれば「悪しき要因」としてばかり取り上げられがちである。しかし、無資源国であるわが国にとって、エネルギーの安定供給は死活を左右する問題であり、なかでも1次エネルギーの最大シェアを占める石油の確保は最重要課題でありつづけている。さらに、非化石エネルギーが拡大するにつれ、その不安定性を補い、緊急時の「バッファーエネルギー」となる石油の役割は高まってもいる。
その一方で、中長期的にみた場合、人口減少などにともない、石油製品(燃料油)の国内需要は、現在の約1億9000万キロリットルから、2020年には約1億3500万キロリットルまで大幅に減少することも見込まれている。余剰設備の削減、適正化を進めていかねばならないし、同時に、全国津々浦々まで張り巡らされたサプライチェーンをいかに維持していくかという課題にも直面している。
こうしたなかで石油業界は、地球環境の保全や循環型社会の形成に貢献し、経済社会の持続的発展に寄与することを基本理念として、石油の高度利用かつ有効利用と持続可能な再生エネルギーの導入に取り組むことで、エネルギー政策における「3E」(安定供給の確保、環境への適合、経済性)の同時達成を追求していこうと考えている。そのために、低炭素社会実行戦略を策定し、今後、その実現に向けて全力を傾けていく所存である。
2020年度に向けた取り組みをご紹介したい。まず、製造段階での取り組みとしては、既存最先端技術(BAT:Best Available Technology)を積極的に導入することで、2010年度から2020年度まで各年の累積で、原油換算で53万キロリットル/年分の省エネ対策を実施すべく取り組んでいる。これはCO2でいえば年間約140万トンの削減に相当する。
わが国の製油所は、現時点においては、世界最高水準のエネルギー効率を達成している。ただし、日本の製油所の多くは昭和30年代終わりから40年代の初めにつくられたものであり、新しいものでも昭和50年に完工という現状がある。そのため建設当時の理念は安定供給であり、製油所の設計も、安定供給を非常に重視したつくりとなっている。
象徴的なのが、石油精製の1次処理と2次処理のあいだに、中間タンクが設けられていることであろう。原油の精製は、常圧蒸留装置(トッパー)で、LPG、ナフサ、灯油、軽油、重油などの留分に分けていく1次処理と、出てきた重油留分をガソリンに作り変えたりしていく2次処理からなる。このメリットは、1次処理の段階で何らかの問題が発生しても、ほかから原料を運び込み中間タンクに入れれば、2次処理の装置は引き続き動かすことができることである。安定供給には都合がよいため、このような仕組みでつくられてきたのだが、中間タンクで一度冷却されるため、2次装置で再び熱し直す必要があり、どうしてもエネルギー的にはロスが生じてしまう。
現在、新興国で新規に建設される製油所では、熱のロスが大きい中間タンクを省いて、1次処理からダイレクトに2次処理につなげるホットチャージ方式が採用されている。トラブルが発生すれば全体が停止してしまうリスクはあるものの、日本のシステムより圧倒的に効率的である。
では日本でも効率化のために中間タンクを除けばいいかというと、そう簡単ではない。システムのあちこちを調整する必要が生じ、総合的に判断した場合、結局は新規に作り替えたほうがまし、ということも考えられる。先に紹介したように、今後、国内需要の大幅な減少が見込まれるなかで、そのような設備更新は現実的には困難である。これは装置産業の抱える、大きな問題といえよう。
われわれは、これまでも熱回収器などの既存最先端技術の導入や近隣工場の連携推進などによって、原料の有効利用等、世界最高水準の効率を実現してきたわけであるが、さらにできるかぎりの努力を積み上げ、世界最高水準のエネルギー効率を維持・向上させ、先ほど掲げた省エネ目標を達成しようと考えている。
次に、石油製品の輸送・配送段階での取り組みである。年間2億キロリットルの消費量をもつ石油製品の物流は、それ自体で多くのエネルギーを必要とする。業界は、可能なかぎり、輸送・配送段階での省エネルギーに取り組んでいる。
たとえば、産油国からの輸入の際に超大型船を利用し、運送効率を高くしたり、内航海運においても船を大型化するなどの工夫をしている。
また、国内の需要が減っていくなかでサプライ_チェーンを維持するために、油槽所の共同利用や製品の相互融通等の推進、渋滞の少ない夜間配送を導入するなど、効率化をはかることで、温暖化対策にも貢献している。
運搬のタンクローリーもこれまで積載量10キロリットルだったものを、20キロ、30キロと大型化している。老朽化したSS(サービスステーション)を建て替える際にも、地下タンクを大型化し輸送回数を減らすことや、省電力機器の採用による電力消費量の削減にも取り組み、効率化を進めている。また、SSの屋根に太陽光発電システムを導入することにより、温暖化対策を進め、かつ災害時の製品安定供給をもめざしている。
2011年10月、玄海原子力発電所の再稼働をめぐる「やらせメール」問題について、第三者委員会の委員長である郷原信郎氏に伺った。
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