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08年5月に出版した『本当にヤバイ!中国経済』(彩図社)において、筆者は、
(リスク回避の面から見ても、日本は対中投資減速のペースを速めながら、インドやベトナムなど、より輸出競争力の高い新興経済国への投資を拡大していくべきである。
理想的には、対中投資と対印投資の規模を拮抗させ、リスクをヘッジすることが望ましい。今の状況を見ていると、ここ2、3年以内にインドへの投資が対中投資を上回る可能性も、決してゼロではないと思われる(198頁))
と書いた。ところが、2、3年以内どころか、まさに筆者が同書を出版した08年度の時点で、日本企業の対インド投資純増額が、中国向けを上回ってしまったのである。筆者は心底から驚き、データを見た瞬間、思わず呆然となってしまった。
【図4-4 日本の対中印越向け海外直接投資 05年度-08年度 (単位:億円)】

出典:財務省のデータから筆者作成
せっかくであるから『本当にヤバイ!中国経済』執筆時に注目していた2カ国、すなわちインド及びベトナムに向けた日本の直接投資を、対中投資と比較してみよう。
08年度を通じ、対ベトナム投資も相当に増えたが、対インド投資の伸びはまさしく桁違いだ。何しろ前年度と比較して、対印直接投資は四倍以上にも膨らみ、対中投資額を一気に抜き去ってしまったのである。
対印投資が今後も拡大していくか否かは、同国の「インフラ整備」にかかっていると考えられている。
もっとも、実はインドのインフラ整備の遅れこそが、日本企業にとってのビジネスチャンスという考え方も可能だ。インフラが未整備なインドだからこそ、最強のインフラ企業が目白押しの日本にとって、格好の投資先と言えないこともないわけである。
それに比べて中国の場合、大々的な公共事業を展開している以上、インフラ産業の市場も確かにあることはある。しかし、その市場は「バイ・チャイニーズ」の戦略下に置かれ、外資系企業に開放されているとはお世辞にも言い難い。
意外に知られていないが、実は09年の中国は、海外からの対内直接投資の激減に直面している。もちろん、最大の理由は、08年9月のリーマン・ショック以降の金融危機である。とはいえ、日本企業の「中国離れ、インド好み」の影響も、決して小さくはないだろう。
09年1月から5月までの対中直接投資は、総額が340億ドル(約3兆2600億円)と、対前年同期比で2割も縮小してしまった。総額もさることながら、同国への新規進出企業数が7890社と34%も減少してしまったことは、基盤技術について基本的に外資頼みの中国経済にとっては、実に不吉な事象である。
何しろ、中国経済を真の意味で牽引してきたのは、同国に生産拠点を設けた外資系企業の輸出なのである。
そういう意味で、アメリカを中心とする世界的な需要の激減も、外資系企業に中国投資を躊躇わせる一因になっているわけだ。
危機感を強めた中国共産党は、株式市場における外資系企業の上場を容認するなど、複数の対応策を検討している。
これまでは、中国の株式市場では外資系企業が単体で上場することがいっさいできなかった。外資系企業は、中国企業との合弁会社を上場させる以外に、同国の株式市場から直接資金を調達する手段はなかったのである。
とはいえ、国内暴動が相次ぎ、少数民族との軋轢が止まず、一度進出してしまうと撤収する際に「中国撤退セミナー」を受講する必要があるような状況では、たとえ金融危機の悪化がなかったとしても、中国への直接投資は頭打ちになったようにも思える。
09年7月上旬の東トルキスタン(新疆ウイグル自治区)暴動を皮切りに、中国が外国と軋轢を起こすケースが目立ってきている。
7月10日、トルコのエルドアン首相は、上記暴動について、
「ウイグル族に対する大量虐殺のようだ」
と厳しく批判した。さらに、同国やインドネシアでは、中国を批判する一般大衆が大々的な抗議行動を展開している。
そんななか、国際テロ組織アルカイダと関係があるグループが、北アフリカで働く中国人らに「報復する」と宣言したことを、複数のメディアが報じた。
現在、中国はアフリカ各国に大々的な「支援」を行っているが、現地国の人々を潤しているケースは皆無だ。
何しろ、支援に際し、技術者や労働者として膨大な数の中国人を送り込み、現地人の雇用環境をかえって悪化させているのである。
さらに「援助物資」と称し、国内で供給過剰になった衣類などの製品を大量に送りつけてくるのであるから、始末に負えない。
もともと、中国人への反感が強い北アフリカのイスラム諸国には、アルカイダ系イスラム過激派の支部が多数存在している。イスラム諸国に自国の労働者を送り込みつつ、国内ではイスラム系民族を弾圧する中国の矛盾が、一気に噴出した格好になった。
また、東トルキスタン暴動と同日の7月5日、中国当局が、英豪資源大手リオ・ティントの社員を、鉄鉱石価格交渉に絡んだ「スパイ容疑」で身柄を拘束した事件も、同国の「異質性」をまざまざと世界に見せつけた。
中国では、政府官僚などの有力者と「コネクション」をつくらなければ、ビジネスを拡大することは難しい。リオ・ティントの幹部らは、中国の「慣習」に従い、コネクションの確立(接待や情報交換など)を図ったところ、いきなりスパイ扱いで逮捕されてしまったわけである。
リオ・ティント側は、
「通常のビジネスが、中国ではスパイになる」
と反発しているが、この事件の裏には、リオ・ティントが前月(6月)に、中国非鉄大手「中国アルミ」との総額195億ドルの提携を破棄したことがあると言われている。
要は、自国企業を切り捨てられた意趣返しに、中国当局が難癖をつけてリオ・ティントの社員を拘束した可能性が極めて高いのである。
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最終章 内憂外患――「資本主義の皮を被った共産独裁国」のジレンマ
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