PHP総合研究所
研究員:宮下 量久
6月18日、石川嘉延前知事の辞職に伴う静岡県知事選挙が告示されました。石川氏は、富士山静岡空港の開港延期問題の責任をとって、任期満了を待たずに辞任したのです。6月4日に空港は開港したものの、富士山静岡空港に対する世間の評価は厳しいものがあります。他の地方空港の多くは赤字にもかかわらず、首都圏に羽田空港・成田空港、名古屋圏に中部国際空港があって、なぜ、静岡に新たな空港が必要なのか。また、日本有数のお茶の産地である牧之原台地に空港を建設したことから、貴重な環境を犠牲にしたという批判もあります。
しかし、空港に対する非難を繰り返すばかりでは、約1,900億円の税金を投入した空港は本当に無駄な公共事業となってしまいます。今後、空港の有効活用策を具体的に検討することが重要です。その起死回生策として考えられることは、空港直結の東海道新幹線新駅設置です。空港直下には東海道新幹線が走っています。実は、空港建設の計画段階から、新幹線と直結することが想定されていたのです。空港と新幹線が融合した交通モデルはわが国で他に例がなく、空港利用者の利便性は飛躍的に向上するでしょう。
新駅設置は空港だけでなく、東海道新幹線を有効に活用するためにも必要です。2025年には、リニア新幹線が東京と名古屋間で開通予定です。さらに、大阪方面への延伸も検討されています。東京と名古屋、大阪間を移動する人々は、リニア新幹線を利用するでしょう。東海道新幹線の利用者減少は容易に想像できます。リニア開通後、JR東海が新幹線を維持するならば、利用者の新規ターゲットを静岡県民にすべきです。なぜなら、東海道新幹線17駅のうち6駅が静岡県にあり、新幹線の通過都府県で最も長い距離を走るのも静岡県だからです。その反面、最速の「のぞみ」は1駅も停車せず、現在の新幹線は静岡県民にとって不便なのです。この東海道新幹線を空港と融合させることで、静岡県民は空港と新幹線の双方を利用しやすくなります。
7月5日、新しい静岡県知事が誕生します。近年のマニフェスト選挙では、近視眼的な議論に終始する傾向にあります。空港への新駅設置にも多額の建設事業費が予想されます。このことを短期的に見れば、新規事業に伴う負担増加と抵抗を感じる方も多いと思います。しかし、空港のすぐ西側に位置する掛川駅は、将来的なまちづくりのために、建設費約124億円を地元の負担によって設置されています。国の補助金に依存せず、地域主導で駅を設置した好例がすぐ隣にあるのです。各候補者は、マニフェストで空港の具体的政策には必ずしも踏み込んでいませんが、空港新駅設置を長期的な地域戦略と位置づけて、空港の有効活用の道筋を県民に示すべきです。
(2009年6月22日掲載。*無断転載禁止)
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