
PHP総合研究所
常務取締役 永久寿夫
「選択的夫婦別姓」=希望によって夫婦で別姓を公的に名乗ることができる民法改正の準備がなされている。その理由を「仕事上の事情から結婚前の姓を名乗りたい」「生来の姓を自己のアイデンティティと感じる」人が若い世代を中心に増えているから、と民主党の政策集は示している。もっとも、改正案は自民党政権下の96年に法制審議会が答申した内容と同じ。選択的夫婦別姓は、政党の枠を越えて意見が対立し、長年放置されてきた社会的課題である。
現実的に結婚で姓を変えてきたのは女性である。寿退社が当たり前だった時代は過去のこと。いまや結婚しても働き続けるほうがマジョリティの世の中である。姓を変える不便さを感じる女性の数は圧倒的に増えたはず。事実、しばらく前には奇異に見られた、旧姓を名乗る働く女性も珍しくなくなった。それより、姓という自分の「ブランド」を結婚で変えねばならないのは「不合理」と感じるのは、きわめて自然なことである。婿養子に入るのを嫌がる男性も夫婦別姓ならOKとなるにちがいない。一人娘の家も助かる。
亀井静香金融相の「身も心も一緒になりたいというのが結婚するときの一般的な心情」という結婚観が、一般的とも夫婦同姓の理由になるとも思えない。山谷えり子議員は「夫婦、親子をバラバラにする」というが、離婚や親子関係の崩壊はすでに他の理由で増加しており、姓が異なって家族が崩壊するなら、もともとその程度の絆しかなかったということではないか。同姓は伝統というが、武家では儒教の影響が強く、妻は「よそ者」扱いで別姓、農民・町民では同姓だったらしい。立場の違いで異なるという点では、選択的夫婦別姓は昔からあったとも言える。
(2010年03月09日掲載。*無断転載禁止)
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永久寿夫(ながひさ・としお/株式会社PHP総合研究所常務取締役)
略歴:1982年慶應義塾大学法学部卒業。スタンフォード大学ロシア・東欧学修士、カリフォルニア大学(UCLA)政治学博士。著書に『ゲーム理論の政治経済学』、『スラスラ読める日本政治原論』など。杉並区行政評価検討委員会委員、神奈川県経営戦略会議委員、東京外国語大学非常勤講師などを歴任。関西大学客員教授を務める。国家経営研究本部長を兼務。
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