政策総合研究部主任研究員 佐々木陽一
政府の地方分権改革推進委員会(分権委)が第2次勧告をまとめ、麻生首相へ提出した。勧告のポイントの1つは、国の出先機関が手がける事務・権限・職員の地方移管を提言したことである。地方行財政に関する権限・職員・財源の指揮命令権を一元的に掌握する中央集権体制の解体を地方分権改革の本丸とすれば、今回分権委が勧告した出先機関改革は二の丸と言えるかもしれない。というのも、非現業の国家公務員約32万人うち約21万人は、出先機関に勤務しているからだ。分権委員会が改革を勧告したのはこのうち、8府省15系統の約9.6万人、予算総額で約10兆円に上る。
なかでも国土交通省の出先機関である地方整備局は、全出先機関の予算総額の3分の2を占める巨大組織である。関東整備局の予算額約2.0兆円は、埼玉県や千葉県の一般会計予算とほぼ同規模。同様に、近畿整備局の予算額約1.3兆円は、京都府+滋賀県の予算合計額に匹敵する巨大さである。今回の第2次勧告で、分権委が国道と一級河川の管理権限の地方移管にこだわったのも、地方整備局の予算規模の巨大さからして、その見直しが地方分権改革の成否を左右すると考えたからであろう。地方整備局が握る巨大な権限・職員・財源が地方へ移管されれば、国と地方の二重行政によるムダな行政コストを省き、その分を地方へ投資できるようになる。その方がよほど地域の活性化にも役立つだろう。
しかし、国道、河川について、第2次勧告で国から地方への移管が実際に決まったのは、国道は全459路線のうち81路線、一級河川は全109水系のうち6水系に留まっている。現時点で、残りについては、国交省に都道府県との協議を急ぐよう促すに留め、どこまで移すかは勧告に書き込めていない。各省庁は「全国的視点に立った事務」という言い分で、出先機関の機能を温存しようとしている。各省庁が合意した部分だけを書き込む手法は、まさに霞が関主導の進め方で、これでは地方にとって多くは望むべくもない。要するに、地方へ移管する事務・権限が生煮え状態ならば、移管する職員数も具体的に積算できるはずがない。分権の実を上げるには、地方に移す事務権限を極力積み増すことが肝心であろう。
ところが、そうした事務権限を霞が関の官僚から奪い取る役割を担う政治は、自治体首長、首相ともに非常に心許ない状態にある。自治体側には東京、大阪、秋田、佐賀など国交省案を上回る権限移譲を求めている都府県もあるが、ごく少数だ。むしろ、財源が伴わない仕事が増えることを危惧して、国からの権限移譲に慎重姿勢を示す自治体の方が多いくらいだ。例えば、北海道では、地元選出の国会議員、地元経済界、自治体が声を揃えて、北海道開発局の存続を訴える頼りなさである。総論では地方分権を訴えながら、各論になると腰が引けている首長が少なからずいる。他方、麻生首相は出先機関の見直しに前向きだが、与党内での指導力は急速に低下している。そのためか、霞が関の官僚には、「弱体化した政権に、出先機関改革ができるはずがない」などと広言される始末のようで、今後の展開は全く楽観できない。
こうした状況が続けば、「首長の足並みの乱れと政権支持率の低下→官僚が非協力的になる→地方分権の停滞→首長の足並みの乱れと政権支持率の低下がさらに進む」という悪循環に陥り、地方分権改革は停滞しかねない。政治は今、かつて小泉元首相が「自民党をぶっ壊す」ことを掲げて、行財政改革を牽引したように、「霞が関をぶっ壊す」くらいの気概を国民へ示し、民意の力を借りて分権改革に取り組むことを真剣に考えるべき時に来ているのではないか。政治がここで奮起しなければ、来春予定されている税財源の地方移管に関する改革(第3次勧告)もまた、未完の改革になりかねない。
(2008年12月24日掲載。*無断転載禁止)
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