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第41回「『人権教育』をどう考えるか」

政策総合研究部主任研究員 亀田 徹

 2010年から、国連の「人権教育のための世界計画」が第2フェーズ(段階)に入りました。この世界計画は、各国の人権教育を推進するために国連総会で決議されたものです(日本は共同提案国)。2005〜2009年の第1フェーズは初等中等教育を中心に人権教育を進める計画でした。第2フェーズの焦点は、高等教育及びあらゆるレベルの教員・公務員等の人権研修となっています。
 日本では2000年に「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」が成立し、同法に基づき「人権教育・啓発に関する基本計画」が閣議決定されています。これを受け文科省は「人権教育の指導方法等に関する調査研究会議」を設置。文科省として初めて学校での指導のあり方をまとめています。

 人権教育というと、多くの人が差別問題をイメージするのではないでしょうか。しかし、個別の問題にイメージを特化してしまうと、“自分のまわりに人権侵害の問題はないから、自分には関係ない”と思いこんでしまうおそれがあります。
 そこで、学校では最初から“人権侵害の問題”を扱うよりむしろ、まずは学校生活における“望ましい状態”を学ぶべきと考えます。学校生活の“望ましい状態”を学び、体感することで、「日常生活の中で人権上問題のあるような出来事に接した際に、直感的にその出来事はおかしいと思う感性」(人権擁護推進審議会答申)を身につけることができるからです。さらに、“望ましい状態”を学ぶことの必要性は、どの地域、どの学校においても同じように高いからです。

 では、この“望ましい状態”を子どもたちに学ばせるには、どうすればよいでしょうか。
 文科省のまとめでは、人権尊重の理念を「自分の大切さと共に他の人の大切さを認めること」とし、「それが態度や行動に現れる」ことを求めています。すなわち“自己肯定感の育成”と“人間関係づくり”が人権教育の柱です。この“自己肯定感の育成”と“人間関係づくり”は知識として学ぶものではなく、周囲の人の言動から学ぶものです。教師の姿そのものが人権教育であるといえます。
 ある小学校では、子どもたちの人権意識を育てるため、「教師の言葉がけの基準」を設定しました。「話を聞くときは 子どもの言葉に『〜ね。』を付けて共感的に」「叱るときは 短くぴしっと叱る」といった指針です。「教師の一番の武器は笑顔です。『にこっ』と『くっきり』笑いましょう」とも書かれています。

 同時に、学校のなかでトラブルや問題があったときにどう行動し、どう解決するかを学ぶことも大事です。学年が上がれば、学校内にとどまらず地域や社会の問題をどう解決するか、さらに人権とは何か、どのような問題に対して人権をどう行使すべきかを学ぶことも必要になるでしょう。
 人権教育をこのように理解すれば、人権教育は学校教育の基本であること、人権教育の推進を前提に学校生活が営まれていることがわかります。

 最近、すこし気になる動きがあります。人権教育の取組調査を文科省が実施し、昨年10月に結果を公表しました。前述の世界計画において取組成果を評価するとされていることに対応する調査です。この調査を見ると、各学校に対して「人権教育に関する全体計画を定めていますか」「年間指導計画を定めていますか」と質問しています。

 人権教育の柱が“自己肯定感の育成”と“人間関係づくり”であり、教師の姿そのものが人権教育であるとすれば、計画書を作成しているかどうかで人権教育の推進状況を判断することはできません。しかも、いま学校は「道徳の指導計画」や「総合的な学習の時間年間計画」、「キャリア教育全体計画」などさまざまな計画書類であふれており、人権教育の計画を作成しても単に書類が一つ増えるだけです。
 書類作成の有無を問うのではなく、子どもたち自身に「笑顔であいさつしていますか」「いじめがあったときにクラスで話し合いが行われましたか」などをたずね、その学校の人権教育が具体的な効果をあげているかどうかを調査すべきです。

 本年から始まる第2フェーズでは、学校や教育委員会、文科省においてぜひ人権教育の趣旨にそった取組を進めてほしいと考えます。

(2010年01月13日掲載。*無断転載禁止)
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亀田 徹(PHP総合研究所主任研究員)

略歴:1991年東京大学教育学部卒業後、文部省に入省。教職員定数、大学改革、生徒指導、学校図書館、人権教育、著作権制度などを担当。98年から2000年まで福岡県教育委員で高校教育を担当。文部科学省生徒指導室長を経て、2006年PHP総合研究所入社。学校経営を中心に、学校教育および教育行政の研究に従事。

亀田 徹(PHP総合研究所主任研究員)

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