トップ頁 > PHPからの主張 > 教育のとびら:第35回「大学入学資格制度は必要か」

PHPからの主張

PHPからの主張TOP

研究最前線

教育のとびら バックナンバー

教育のとびら

第35回「大学入学資格制度は必要か」

政策総合研究部主任研究員 亀田 徹

 「高大接続テスト(仮称)」という学力試験の構想をご存じでしょうか。

 少子化と大学入学定員の拡大によって大学入試を通じた学力水準の確保が困難になっていることを受け、中央教育審議会が新たな仕組みの検討を昨年末に提言しました。学力を客観的に把握し、その結果を高校教育の改善や大学入試などに活用するため、高校と大学間で「十分な協議・研究が行われることを期待する」としています。

 高校と大学の接続といえば、一般的には大学入試をイメージすると思いますが、現在、法律において学校間の接続関係を定めているのは入学資格という制度です。

 大学に入学するには高校卒業などの資格が必要だと学校教育法に規定されています。

 入学資格のない人は大学入試を受けることができません。高校等を卒業していない人が入試を受けるには、あらかじめ高卒認定試験(かつての大検)を受けるなどによって入学資格を得ておく必要があります。

 大学入試センター試験の受験案内では、高校卒業又は卒業見込みなどのほか、出願資格の詳細を5ページにわたって記載しています。たとえば以前は外国人学校を卒業しても入学資格は得られませんでした。制度改正により、指定を受けた外国人学校を卒業した場合や大学が個別に認めた場合などは入学資格を得られるようになっています。

 なぜこのような入学資格制度が設けられているのでしょうか。

 それは、一定の学習修了を条件とすることで教育水準の維持向上を図るとともに、小・中・高・大という学校教育体系を明らかにするためであるといわれています。

 しかし、学歴のあるなしにかかわらず、大学入試に合格しさえすれば入学してもよいのではないでしょうか。たとえばアメリカやイギリスでは法令上の入学資格は無く、入学要件などは各大学が定めています。教育水準の維持向上を図るために必要なのは入学資格制度ではなく、入試内容や大学・高校教育の内容を改善することです。

 また、仮に入学資格制度がなかったとしても、中学を卒業して高校に進学しその後大学に進学するという学校教育体系が実際上大きく変わるとは思えません。高校等進学率が98%にまで上っているのは、大学入学資格を得るためではなく、高校教育を修了する必要性が広く認められているからでしょう。

 学校制度は、本来、生徒や保護者、学校、社会の必要性に応じて設けられるべきものです。入学資格制度は、実際上の必要性に乏しく、学校制度のための制度になっているのではないかと考えます。受験案内5ページ分にわたるほど複雑でわかりにくい制度になっているのも、その表れだといえるでしょう。

 制度を維持するにしろ改正するにしろ、誰のどのような必要性に基づいてその制度が設けられているかを考えることが必要です。この入学資格の制度も、そういった観点から見直し、廃止も含めて検討すべきだと考えます。

亀田 徹(PHP総合研究所主任研究員)

略歴:1991年東京大学教育学部卒業後、文部省に入省。教職員定数、大学改革、生徒指導、学校図書館、人権教育、著作権制度などを担当。98年から2000年まで福岡県教育委員で高校教育を担当。文部科学省生徒指導室長を経て、2006年PHP総合研究所入社。学校経営を中心に、学校教育および教育行政の研究に従事。

亀田 徹(PHP総合研究所主任研究員)

教育のとびら バックナンバー

WEB特別企画

「GreenWorkplace」で実現する「節電でも成果が挙がる働き方」 東日本大震災による影響で、東日本を中心に全国的に節電に取り組む必要が出てきた…

「我慢する節電」から「快適な省エネ」へ

今日から効果が上がる「ストレスゼロ・テクニック」とは?
社内や取引先との人間関係、重いノルマや責任など、ビジネスマンはストレスにさらされ続けている。ストレスを抱えていると仕事のパフォーマンスが悪くなり、さらなるストレスを生むこともしばしば…

つらい環境や嫌な相手は変えられなくても、ストレスは軽くできる!

「コンプライアンス」という言葉はきっと耳にしているはず。だが、その意味するところをほんとうに理解しているだろうか? 日本にコンプライアンスの考え方が本格的に導入された時点から、そのルールづくりに携わってきた野村修也先生に、誤解されがちな「コンプライアンスの真の意味」についてうかがった。

誤解したままでは、会社も個人も思わぬ失敗に陥る可能性が……

温室効果ガスの削減など、環境問題に注目が集まるなか、石油はともすれば「悪しき要因」としてばかり取り上げられがちである。しかし、無資源国であるわが国にとって…

低炭素社会に向けた石油産業の取り組み

悩める個人投資家に朗報!
元為替チーフディーラーの両雄が�牴射鄙蠑譴任眈,討覘疆蟷駛,鯏按貉愼遏�

普通のサラリーマンのための賢いFX投資&ツール活用術

WEB連載

木内博一 (農事組合法人「和郷園」代表理事)

当連載が本になりました!
『最強の農家のつくり方』(定価1,470円)
「農業界の革命児」が語る成功の方程式と日本再生への構想をぜひ、ご一読ください。

『最強の農家のつくり方』

斎藤 環(精神科医)

フィクションとリアルの混同とは何か。サブカルチャーに精通する精神科医が、映画、漫画、小説などから読み解く現代世相
第2回 あらゆる関係はS−Mである

「虚構」は「現実」である

野口悠紀雄(早稲田大学教授)

「オフショア」「タックスヘイブン」の姿を知ることで、日本経済の問題点と進むべき道が見えてくる!
第2回 タックスヘイブンは存在悪か?

『現代版宝島物語――「オフショア」の秘密』

通販のユーコー

ビットウェイ・ブックス

ビデオ アーカイブズ プラス

トップ頁 > PHPからの主張 > 教育のとびら:第35回「大学入学資格制度は必要か」