政策総合研究部主任研究員 亀田 徹
先月公表された「教育指標の国際比較」(文科省)に示されている教員1人あたり児童生徒数を見ると、諸外国と日本の教員数の多寡を比較することができます。小学校段階におけるOECD加盟国平均の教員1人あたり児童生徒数が16.2人であるのに対し日本は19.2人、中学校段階での平均13.3人に対し日本は14.9人となっており、日本の教員数は小中ともに平均を下回っています。
政府は21年度予算案で小中学校等の教職員を800人増やすこととしていますが、OECDの平均に達するには10万人近く増員する必要があると試算されます。
教育振興基本計画(20年7月閣議決定)では、公財政教育支出のGDP比がOECD平均を下回っていることに触れた上で、「きめ細かな対応ができる環境を実現する」としているのですから、教員数のさらなる増員を目指すべきだと考えます。
しかし、現実的には財源が限られており、一気にOECD平均まで増員するのは困難でしょう。優先順位をつけながら段階的に増員する必要があります。
では、小学校と中学校とを比べればどちらの教員増を優先すべきでしょうか。
さきほどの統計データからすると、小学校教員数の方が平均をより下回っているので、増員の必要性が高いようにも見えます。
また、小学校では、学習や集団生活の基本的習慣を身につけさせるため丁寧な指導が求められています。クラスサイズの原則は1学級40人ですが、実際には43道府県で35人や30人などの少人数編制を実施しています(17年度文科省調査)。中学校の少人数編制を実施しているのは27府県ですから、小学校の方が少人数編制による指導の必要性がより高いといえます。
一方、勤務時間からは、中学校教員の勤務時間が長く仕事の負担がより重くなっている状況が浮かびあがってきます。18年度に東京大学が行った教員勤務実態調査では、小学校教員の残業時間の平均は1時間30分〜2時間ほどとなっています。それに対し中学校教員は部活動業務などがあるので、残業時間は2時間10分〜30分ほどと小学校に比べて長くなっています。中学校教員の方が仕事の負担感をより抱えているという別の調査結果もあります。
以上の実態からすれば、限られた財源の下で小中それぞれの事情に応じるためには、どちらかを優先するというより、小中兼務の教員数を増やしてはどうかと考えます。少人数指導のため、あるいは部活動などの校務を分担するためなど、増員が必要とされる事情に小中で異なる部分があるからです。
小中それぞれ教員を増員するとともに、そのうちの一定割合を兼務教員とするのです。兼務教員は、中学校での授業や校務とともに小学校の授業も一部担当します。
近年、小中一貫の取組が各地域に広がっており、たとえば宇都宮市では22年度から段階的に小中一貫教育を実施する予定です。一貫教育カリキュラムを実施し、小学校高学年では中学校のように教科担任制を取り入れ、中学校教員が小学校で授業を行うこととしています。その際、今後導入される小学校高学年での外国語の授業を中学校教員が担当することも考えられるでしょう。中学校教員が小学校高学年で授業を行えば、高学年の担任が空いた時間を活用して低学年での授業のサポートに回ることもできるはずです。
政府の21年度予算案では、退職教員等1万4千人を学校に配置する事業費として58億円を計上しています。しかし、退職教員等を配置するのではなく、基本的には正規教員を増員して配置すべきです。さらに、増員する教員の一部を小中兼務にすれば、単に財政面だけでなく、子どもたちへの指導の面でも有効な手段になると考えます。
亀田 徹(PHP総合研究所主任研究員)
略歴:1991年東京大学教育学部卒業後、文部省に入省。教職員定数、大学改革、生徒指導、学校図書館、人権教育、著作権制度などを担当。98年から2000年まで福岡県教育委員で高校教育を担当。文部科学省生徒指導室長を経て、2006年PHP総合研究所入社。学校経営を中心に、学校教育および教育行政の研究に従事。
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