政策総合研究部主任研究員 亀田 徹
田川ふれ愛義塾というNPOが福岡県田川市にあります。非行傾向のある青少年、暴力行為や薬物使用などの問題行動を起こしたことのある青少年を受け入れ、その社会復帰や学校復帰を目指す団体です。代表の工藤さんは、かつて暴走族「極連會」の総長でしたが、逮捕をきっかけに転身を決意したそうです。工藤さんの活動はテレビや新聞などでたびたび取りあげられています。
田川ふれ愛義塾を支えているのは、地域や行政のバックアップです。地域のボランティアや学校の先生方が学習を支援しています。福岡県警は工藤さんをモデルに暴走族対策のポスターを作成しました。教育委員会はマスコミ対応や問い合わせへの対応などを手伝っています。これらのサポートがあるからこそ、工藤さんは力を発揮することができているのでしょう。
このケースはNPOと教育委員会との連携が進んでいる好事例ですが、教育の分野ではNPOと教育委員会との連携がなかなか進んでいないのが実態です。
連携が進まないのは、そもそも教育委員会がNPOとの連携の必要性を認識していないからです。子どもの教育のことは学校で行うという意識が強いのでしょう。連携しようという考えがないので、どういうNPOが存在するか、NPOがどういう活動をしているかを教育委員会は把握していません。活動内容を知らないから連携しようという考えが浮かばない、ともいえます。
まず、教育委員会はNPOのことを知る必要があります。書面での調査ではなく、NPOと直接話し合うことです。NPOの活動内容を知るだけでなく、行政の視点からは見えにくい地域の実態を把握することもできるでしょう。NPOにとっても、行政担当者と話し合うことで、行政側の考え方を知ることができるというメリットがあります。田川ふれ愛義塾のケースでは、工藤さんと学校・教育委員会との人的なつながりが、行政によるサポートのきっかけとなっています。
連携が進まないもうひとつの理由として、教育委員会担当者は、「特定のNPOとだけ連携することはできない」という点をあげます。NPOは民間団体なので、特定のNPOを連携先として選ぶとなると、なぜそのNPOを選んだかの説明が難しいというのです。その結果、教育委員会はどのNPOとも関わりを持たないという、ある意味では公平な態度をとることになります。
行政とNPOとが連携するためには、そのための制度やシステムを設ければよいと考えます。制度に基づいていれば、たとえ特定のNPOと連携したとしても問題は生じません。最近はイベント等の企画運営や調査研究などをNPOに委託する自治体もあります。東京都葛飾区や新宿区などでは、NPOとの協働事業を実施しています。事業内容の提案をNPOから公募し、審査を経て区が予算を計上し、NPOが事業を実施するのです。審査には、学識経験者などのほか区民の中から公募で選ばれた人も参加しています。
また、たとえば青少年健全育成のための地域協議会を設け、協議会のメンバーとしてNPOに参加してもらうことも考えられます。協議会のメンバーは、行政の裁量の範囲で選定することができるからです。その協議会の活動を通じ、NPOと緩やかな連携を進めることも考えられます。
NPOは、行政が取り組んでいない分野において、住民の生活を支援する役割を担っています。だからこそ、行政とNPOとが連携することで、互いの活動をより効果的に進めることができます。
教育委員会は、学校・家庭・地域との連携を進める立場であり、NPOも地域の一員です。多くの教育委員会が率先してNPOとの連携を進め、子どもや保護者、住民のさまざまなニーズに対応した施策を展開することを期待したいと思います。
亀田 徹(PHP総合研究所主任研究員)
略歴:1991年東京大学教育学部卒業後、文部省に入省。教職員定数、大学改革、生徒指導、学校図書館、人権教育、著作権制度などを担当。98年から2000年まで福岡県教育委員で高校教育を担当。文部科学省生徒指導室長を経て、2006年PHP総合研究所入社。学校経営を中心に、学校教育および教育行政の研究に従事。
「GreenWorkplace」で実現する「節電でも成果が挙がる働き方」 東日本大震災による影響で、東日本を中心に全国的に節電に取り組む必要が出てきた…
つらい環境や嫌な相手は変えられなくても、ストレスは軽くできる!
今日から効果が上がる「ストレスゼロ・テクニック」とは?
社内や取引先との人間関係、重いノルマや責任など、ビジネスマンはストレスにさらされ続けている。ストレスを抱えていると仕事のパフォーマンスが悪くなり、さらなるストレスを生むこともしばしば…
「コンプライアンス」という言葉はきっと耳にしているはず。だが、その意味するところをほんとうに理解しているだろうか? 日本にコンプライアンスの考え方が本格的に導入された時点から、そのルールづくりに携わってきた野村修也先生に、誤解されがちな「コンプライアンスの真の意味」についてうかがった。
温室効果ガスの削減など、環境問題に注目が集まるなか、石油はともすれば「悪しき要因」としてばかり取り上げられがちである。しかし、無資源国であるわが国にとって…
悩める個人投資家に朗報!
元為替チーフディーラーの両雄が�牴射鄙蠑譴任眈,討覘疆蟷駛,鯏按貉愼遏�
木内博一 (農事組合法人「和郷園」代表理事)
当連載が本になりました!
『最強の農家のつくり方』(定価1,470円)
「農業界の革命児」が語る成功の方程式と日本再生への構想をぜひ、ご一読ください。
野口悠紀雄(早稲田大学教授)
「オフショア」「タックスヘイブン」の姿を知ることで、日本経済の問題点と進むべき道が見えてくる!
第2回 タックスヘイブンは存在悪か?