政策総合研究部主任研究員 亀田 徹
学校生活の最大の楽しみである給食の思い出は、人それぞれだと思います。年代や地域によっても違うでしょう。私が子どもの頃の人気メニューは、揚げパン、ソフト麺でした。息子に聞くと、最近ではラーメン、フルーツポンチが人気のようです。
給食の実施形態は地域によって差があることをご存じでしょうか。全国どこでも給食が実施されていると思われている方も多いでしょうが、公立小学校のうち完全給食を実施している学校の割合は98.3%です。補食給食(おかずと牛乳だけの給食)、ミルク給食(牛乳だけの給食)の学校、あるいは給食を実施していない学校も一部にあります。中学校になると、完全給食を実施している学校の割合は79.9%、補食給食が0.6%、ミルク給食が10.3%となり、給食を実施していない学校の割合は9.2%となっています。中学校での完全給食の実施率が最も低いのは大阪府(10.2%)、次いで神奈川県(12.7%)です(平成18年度)。
教育の実施体制には、いくつもの地域差があります。
学級規模や教職員数にも、差はあります。学級規模の標準は40人とすることが標準法(※1)で定められていますが、地域や学年によって35人学級や30人学級とすることを教育委員会が決めています。
教職員数の標準も、学級数などに応じて標準法で定められています。標準数を超えて教職員を配置している県もあれば、標準数を満たしていない県もあります。文科省の調査(平成16年度)によると、小中学校の教職員数が標準数を満たしていないところが4県ある一方、最も人数の多い東京都では標準数に対して107%の教職員が配置されています。高校になるとさらに差が拡大し、標準数を満たしていないところが21県ある一方、最も多い京都府では標準数の110%の教職員が配置されています。
※1 「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」及び「公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律」
そのほか、たとえば学校図書館の図書数にも大きな差があります。平成18年度のデータによると、全国の公立小学校のうち、42%の学校では図書の標準冊数を定める学校図書館図書標準(※2)を満たしていますが、一方で、5%の学校(1,144校)では標準冊数の半分にも満たない図書しか保有していません。
さらに、地方交付税の基準財政需要額(標準的な財政支出)に対し実際に図書購入の予算をどれだけ計上したかという調査があります(平成19年度)。全国の市町村のうち、基準財政需要額に対する予算の割合が200%を超える自治体が25もある一方、20%に満たない自治体が92もあります。いかに自治体ごとに差があるかがよくわかります。
※2 たとえば、18学級規模の小学校であれば10,360冊
教育の機会均等は確保されなければなりませんが、教育に配分する予算は地域によって差があるのが実状です。
しかし、その差は一概に否定されるべきものではありません。地域の置かれている状況はさまざまですから、地域の実態に応じどのような予算を編成するかは各自治体の判断だからです。むしろ、一律でないからこそ各自治体が知恵を絞り競い合うことによって、よりよい教育環境の実現が可能になると考えます。
問題は、自治体が教育にどれくらいお金をかけているか、あるいはかけていないかが住民にわかりにくいことです。予算額や前年度からの増減は公表されていますが、それだけでは前述のような教育環境の地域差に対する説明にはなっていません。
たとえば、人口30〜40万人程度の中核市である長野市、高知市、富山市の平成20年度予算を見てみると、そのうち教育費の占める割合は、それぞれ、10.1%、6.9%、11.7%となっています。前年度との比較は示されているものの、なぜ教育費の占める割合が他地域に比べて高いのか低いのか、その点の説明がなされていません。地域の状況に応じてどう優先順位をつけ、あるいはどう効率化を図り、その結果として教育への予算配分はこうなる、という説明を住民に対して行うべきではないでしょうか。
全国的な標準である基準財政需要額との差を説明してもいいかもしれません。千葉県我孫子市では市の基準財政需要額を公表しており、基準財政需要額のうち教育費の割合は11.0%となっています。市の予算のうち教育費が占める割合が11.8%ですので我孫子市ではほぼ標準的な予算措置だということがわかりますが、もしこの基準財政需要額と大きな差があれば、なぜ差が生じているかの説明をすべきです。
予算を拡充しお金をかけるだけで教育の質が向上するものではありませんが、教職員費や施設設備費などを拡充すれば、子どもや保護者の要望に応えられます。しかし、資源は有限ですので、教育にどれだけお金をかけるかどうかは各自治体の経営判断です。その経営判断の根拠と経営方針を自治体は示すべきです。教育環境に差が生じているのはなぜか、その差がどうして地域全体の発展につながるかを説明し、納税者である住民の理解を求めるべきだと考えます。
亀田 徹(PHP総合研究所主任研究員)
略歴:1991年東京大学教育学部卒業後、文部省に入省。教職員定数、大学改革、生徒指導、学校図書館、人権教育、著作権制度などを担当。98年から2000年まで福岡県教育委員で高校教育を担当。文部科学省生徒指導室長を経て、2006年PHP総合研究所入社。学校経営を中心に、学校教育および教育行政の研究に従事。
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