政策総合研究部主任研究員 亀田 徹
「児童虐待防止推進月間」の標語が「助けての 小さなサイン 受け止めて」に決まりました(9月19日厚労省発表)。児童虐待防止推進月間は毎年11月とされています。この期間、児童虐待防止のシンボルであるオレンジリボンを使用し、民間・自治体・国が児童虐待防止のための広報及び啓発などの取組を集中的に実施します。
虐待の相談対応件数は増加の一途をたどっており、平成19年度の全国の対応件数は4万618件となっています(厚労省調べ。速報値)。平成9年度は5,352件でしたので、10年間で約8倍の増加です。一方で、児童相談所に配置される児童福祉司の数は、平成19年度で2,263人です。平成9年度の1,128人から約2倍に増加していますが、件数の増加に比べ職員数の増加が追いついていないことがわかります。児童虐待に対応する職員の不足が指摘されています。
児童虐待は、当事者だけの問題ではありません。その家庭や子どもの問題を解決することは社会全体の安定にもつながります。虐待を受けた子どもたちの成長は社会全体で支えていくべきであり、児童福祉司を十分に配置できるよう予算を確保すべきです。
その際、児童福祉司の一部を教育委員会に配置してはどうかと私は考えます。児童相談所だけで虐待に対応するより、学校など関係する機関と連携して対応することが効果的だからです。
学校の教職員は、毎日、勉強や遊び、給食など多くの時間を子どもたちと一緒に過ごしているので、子どもの様子の小さな変化を発見しやすい立場にいます。各教育委員会では、教職員向けに児童虐待対応の手引きを配布する、研修を実施するなどの施策を講じています。たとえば、身体や衣服が極端に汚れている、給食をむさぼり食べるなどの虐待発見のチェック項目を掲げ、虐待を発見したときはすみやかに児童相談所等に通告することを手引きで示しています。
このように学校と福祉機関の連携のための取組は実施されているものの、まだ十分とは言えません。関係機関と連携せずに、自分たちだけで解決したいと考える学校側の意識の問題もあります。
教職員が児童虐待への対応に関し教育行政に望むことは、「相談できる専門機関の整備」、「研修充実」、「被虐待児童救済のためのサポートチーム作り」、「スクールカウンセラー等専門家の配置や派遣」、「児童虐待に対応する教員の加配」などがあげられます(厚労科学研究調査結果。平成17年度)。いまの学校の体制では児童虐待に対応することはやはり困難です。専門家による支援や人的体制を充実させることが課題となっていることがうかがえます。
近年では、関係機関との連絡や家庭訪問などを行うスクールソーシャルワーカーを学校に配置している地域もあります。また、教員を児童相談所や市町村の福祉部局に配置するケースもあります。これを一歩進めて、中規模以上のすべての市町村教育委員会事務局に児童福祉司を新たに配置するのです。児童福祉司は、教育委員会に机を置き、小中学校に入り込んで子どもや家庭への支援を行います。教育と福祉の垣根を越えた対応が可能になるだけでなく、“あるべき姿に向けて子どもを引き上げる”という教育的アプローチに加えて、“いまの姿を肯定してその子ができることを認める”福祉的アプローチを学校に広めることもできると思うのです。
児童虐待という痛ましい問題の解決に向け、福祉の充実及び福祉と教育との連携にさらに多くのコストをかけるべきです。予算配分は政治の役割ですが、虐待を受けた子どもたち自身が政治を動かすことは困難です。だからこそ、その子どもたちに代わって、私たち大人が声をあげるべきではないでしょうか。
亀田 徹(PHP総合研究所主任研究員)
略歴:1991年東京大学教育学部卒業後、文部省に入省。教職員定数、大学改革、生徒指導、学校図書館、人権教育、著作権制度などを担当。98年から2000年まで福岡県教育委員で高校教育を担当。文部科学省生徒指導室長を経て、2006年PHP総合研究所入社。学校経営を中心に、学校教育および教育行政の研究に従事。
「GreenWorkplace」で実現する「節電でも成果が挙がる働き方」 東日本大震災による影響で、東日本を中心に全国的に節電に取り組む必要が出てきた…
つらい環境や嫌な相手は変えられなくても、ストレスは軽くできる!
今日から効果が上がる「ストレスゼロ・テクニック」とは?
社内や取引先との人間関係、重いノルマや責任など、ビジネスマンはストレスにさらされ続けている。ストレスを抱えていると仕事のパフォーマンスが悪くなり、さらなるストレスを生むこともしばしば…
「コンプライアンス」という言葉はきっと耳にしているはず。だが、その意味するところをほんとうに理解しているだろうか? 日本にコンプライアンスの考え方が本格的に導入された時点から、そのルールづくりに携わってきた野村修也先生に、誤解されがちな「コンプライアンスの真の意味」についてうかがった。
温室効果ガスの削減など、環境問題に注目が集まるなか、石油はともすれば「悪しき要因」としてばかり取り上げられがちである。しかし、無資源国であるわが国にとって…
悩める個人投資家に朗報!
元為替チーフディーラーの両雄が�牴射鄙蠑譴任眈,討覘疆蟷駛,鯏按貉愼遏�
木内博一 (農事組合法人「和郷園」代表理事)
当連載が本になりました!
『最強の農家のつくり方』(定価1,470円)
「農業界の革命児」が語る成功の方程式と日本再生への構想をぜひ、ご一読ください。
野口悠紀雄(早稲田大学教授)
「オフショア」「タックスヘイブン」の姿を知ることで、日本経済の問題点と進むべき道が見えてくる!
第2回 タックスヘイブンは存在悪か?