トップ頁 > Bizスペシャルチャンネル > 「部下を導く上司の心得」その1
上司が方針を明確に提示しなければ、部下は何をして良いのか分からなくなる
どうすれば部下は熱意をもって仕事に取り組んでくれるのか。どうすればもっとやる気を出してくれるのか。これは上司としての日々の悩みでもあろう。あれだけハッパをかけて、励ましてもいるのに、なかなか部下がやる気を出してはくれない。そういう部下は、もう見捨てるしかない。ついついそう考えてしまう上司もいる。
それは大きな間違いだ。部下がやる気を出さないのは、その部下のせいではなく、やる気を出すように仕向けない上司の責任であると私は考えている。
部下の人たちはもともと、一生懸命に仕事をしよう、この上司の指示に従っていこうという気持は必ずもっているものだ。その部下が期待通りの成果を上げないということは、明らかに上司の指示の出し方に問題があるのである。
上司がまずやるべきことは、方針を明確に提示することだ。方針を提示するのは上司として当然のことであるが、曖昧な方針では部下は働くことができない。
例えば運動場の中で、ただ「走れ!」とだけ言われても、どうすれば良いか分からないだろう。ゆっくり走り出す者もいれば、ダッシュをする者もいる。途中で疲れて座り込む者もいるだろうし、もう今日はこれでいいやと勝手に帰ってしまう者も出てくるだろう。つまりこうしたいい加減な指示では、人は動くことができないのである。
そうではなくて「今日は一〇〇メートルを三回走ることにする。スタートラインはここで、ゴールラインはあそこだ。目標タイムはこれこれだ」と言われることで、人は初めて努力の方向性というものが出てくるのだ。
方針というのは努力の方向性を提示することにもなるわけだから、努力の仕方、努力の方向、そしてその努力の終着点はどこかを指し示さなくてはいけない。そういう明確な方針さえあれば、個々に早い遅いの差は少々あっても、全員が走り切ることができるのである。
方針を明確に提示しなければ、仕事がスムーズに進まないばかりか、上司と部下の信頼関係が壊れることにもなる。
例えば上司が部下に新しいプランを出せと指示をする。部下は一生懸命にプランを練って二つのものを提出する。するともっとたくさん出せと言われる。今度は五つのプランをもっていくと、またもっと出せと言われる。期限も明示されていないからじっくりと考えていると、早く出せとせかされる。
また、OKが出る時とそうでない時の根拠もハッキリと分からない。これでは部下のほうがイヤになってしまうだろう。「あの上司の言っていることはサッパリ分からない」「あの上司はいったい何を考えているんだ」と、こうなってしまう。そういう上司の下にいると、たちまち仕事のやる気は失せてしまう。何をやったって認められないのだから、もうどうでもいいやということになってしまう。
指示はより明確に具体的でなければならない。新しい仕事のために新しいプランが必要だ、したがっていついつまでに三つのプランを考えてほしい。プランを立てるに当たっては、これこれの資料が参考になるから見ておくように。そして新しいプランは、次の仕事のこういう場面で活用されることになる。このような指示を受ければ、部下の人たちは必ずややり遂げてくれるものだ。でき上がったプランに多少の差はあるにせよ、必ず上司の期待していたものができるだろう。良いプランが出せるかどうかは、実際に考える部下の人たちの責任ではなく、いかに部下から引き出せるかだ。すべての責任は上司にあると考えるべきである。
部下を導くために(1) すべての責任は上司にあると考えよう。
PHP文庫『人を育てるための上司の教科書』(江口克彦:著)より
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