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永久寿夫の「ずばり言います」

「政治に必要なのは小賢しい選挙戦術ではない、『痛み』を越える覚悟である」

PHP総合研究所
常務取締役 永久寿夫

 97年の年頭所感、橋本総理は「行政改革」「財政構造改革」「社会保障構造改革」「経済構造改革」「金融システム改革」「教育改革」の実現に「火だるま」になって邁進すると額に汗を滲ませ訴えていた。04年の年頭所感、小泉総理は「見えてきた改革の『芽』を『大きな木に』育てていくことだ。断固たる決意で改革を進めていく」と髪を振り回して訴えていた。グローバル化や少子高齢化といった環境変化にうまく適応するよう、新たな国のシステムづくりをする。これが近年のもっとも重要な政治課題であった。

 橋本総理が蒔いて小泉総理が芽吹かせた改革は、安倍、福田、麻生と総理が代わるたびに元気をなくし、「大きな木に」育つことはなかった。10年前に600兆円だった国・地方の長期債務残高はいまや860兆円。国も企業も国際競争力をどんどん落とし、景気は一向に回復しない。年金や医療に対する不安は消えず、子育てや教育に対する不満も募るだけである。橋本総理が「火だるま」になってと訴えていたころと比べて、何がどれだけよくなったのか。

 こうなった理由は選挙にある。改革に伴う「痛み」は野党にとっては攻撃ターゲット。「格差」が生じたという民主に民意が動くと恐れた自民は、改革のアクセルと同時にブレーキをかけた。改革は中途半端になり、自家撞着に陥った自民は信を失った。政権をとった民主は「格差」是正を強調したあまり、競争を促して経済を活性化する改革を打ち出せない。右往左往で結局何もできない「放置国家」日本の頼みは、皮肉にも「豊かになれる人から豊かになれ」と格差是認で突き進む中国。いまの政治に必要なのは小賢しい選挙戦術ではない。「痛み」を越える覚悟である。

※このコラムは今回で最終回です。長い間、ご愛読ありがとうございました。

(2010年03月23日掲載。*無断転載禁止)
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永久寿夫(ながひさ・としお/株式会社PHP総合研究所常務取締役)

略歴:1982年慶應義塾大学法学部卒業。スタンフォード大学ロシア・東欧学修士、カリフォルニア大学(UCLA)政治学博士。著書に『ゲーム理論の政治経済学』、『スラスラ読める日本政治原論』など。杉並区行政評価検討委員会委員、神奈川県経営戦略会議委員、東京外国語大学非常勤講師などを歴任。関西大学客員教授を務める。国家経営研究本部長を兼務。

永久寿夫(PHP総合研究所常務取締役)

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