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第40回「高校授業料無償化への対案」

政策総合研究部主任研究員 亀田 徹

 高校授業料無償化に向けた政府の検討が進んでいます。文科省は、来年度の概算要求に4,500億円超を盛り込みました。来年の通常国会に無償化のための法案が提出される見込みです。目的は保護者の経済的負担の軽減であり、現下の経済情勢を踏まえれば必要な施策だと考えます。
 しかし、無償化の仕組みにはさまざまな問題もあります。
 政府案の仕組みは、公立高校生の場合は授業料相当額(年12万円)を給付して無償とし、私立高校生の場合にも同額の年12万円(低所得世帯には24万円)を給付するというものです。

 その最も大きな問題は、給付に所得制限がないことです。限られた財源の有効活用という観点からすれば、給付対象を一定の所得以下に制限する必要があることは明らかです。すべて一律に給付というのでは知恵がありません。所得制限を年収350万円未満(生活保護に準じる世帯)とすれば、公立高校分については1/10強の予算ですむと試算されます。年収350万円以上の場合は奨学金で支援することとし、無利子奨学金の所得制限と成績要件を撤廃して全員が受給できるようにすればよいと考えます。優先順位をつけ、必要なところにはより手厚く支援すべきです。

 政府案では公私間格差の拡大も懸念されます。私立高校の授業料は平均で年33万円です。私立にも公立と同額の給付があるといっても、公立が無償で私立のみ授業料を支払うとなれば、結果として公私の不公平感がこれまで以上に高まるでしょう。
 生徒全体の3割を私立高校が受け入れていることを考えれば、公私間格差を解消し、保護者の経済力にかかわらず生徒の意欲・能力に応じて学校を選択できるようにすることが必要です。すなわち年収350万円未満の世帯には授業料相当額の年33万円を給付して実質無償とし、350万円を超える場合には授業料相当額以上の奨学金を借りられるようにするのです。

 さらに、授業料以外の費用を支援することも必要です。たとえば入学時の学校納付金は公立高校で24万円、私立高校で44万円です。これが低所得世帯にとっては大きな負担となっています。
 生活保護世帯に対しては、平成17年度から高校就学費用として入学金や入学準備金などが給付されるようになりました。ただし、入学金は公立高校相当額に限られるなど必ずしも十分な額ではありません。私立高校に入学する場合には必要な費用を上乗せすべきです。
 概算要求にも、年収350万円以下の世帯の生徒(45万人)に対し入学料等を支援するための予算123億円が計上されたようです。けれども単純に平均すると1人あたり2万7千円であり、この額では低すぎると考えます。

 なお、給付金を保護者に直接給付するかどうかについて、これまで民主党は保護者に直接給付する仕組みを考えていました。しかし直接給付にすると給付金が教育費以外に使われるおそれがあります。事務費の額も膨大です。このため、政府は、学校の設置者に支給する間接給付の方向で検討していると報道されています。

 以上を整理すると、次のようになります。
 年収350万円未満の世帯については、公立・私立とも授業料相当額を学校の設置者に給付することにより、授業料を無償化。あわせて公立・私立の入学に必要な費用を給付。
 年収350万円以上の場合は、無利子奨学金を受けることを可能とする(所得と成績の要件はなく、すべての生徒が受給可能)。奨学金の額は公立・私立とも授業料相当額を超える額(例:公立は年24万円、私立は年48万円)とする。
 これらに要する新たな経費は、事務費を除いて推計で年間約6,500億円です。政府案に比べ額が大きいように見えますが、奨学金が返還される7年後以降は2,400億円程度になります。中期的にみればより低予算で実現可能な施策といえるでしょう。

 最後に、この施策は果たして国が実施すべきものなのか、との問題があります。
 各自治体では、教育費の負担軽減策にすでに取り組んでいます。公立の場合は都道府県が授業料の減免制度を設け、私立の場合は減免を行う学校法人に都道府県が補助を行っています。そのほか、国が行ってきた高校奨学金事業は平成17年度から地方に移管されています。
 このように、各自治体で施策が現に進められているにもかかわらず、国が並行して施策を実施することは地域主権の方向にそぐわないといわざるを得ません。まずは国が財源を確保して新たな施策をスタートさせるにしても、段階的に財源と事務を自治体にゆだねる計画をあわせて示すべきだと考えます。

(2009年10月21日掲載。*無断転載禁止)
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亀田 徹(PHP総合研究所主任研究員)

略歴:1991年東京大学教育学部卒業後、文部省に入省。教職員定数、大学改革、生徒指導、学校図書館、人権教育、著作権制度などを担当。98年から2000年まで福岡県教育委員で高校教育を担当。文部科学省生徒指導室長を経て、2006年PHP総合研究所入社。学校経営を中心に、学校教育および教育行政の研究に従事。

亀田 徹(PHP総合研究所主任研究員)

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