PHP総合研究所
主任研究員:前田 宏子
オバマ大統領の訪日を11月に控え、鳩山政権が沖縄の在日米軍基地・普天間飛行場の移設問題にどう対処するのか、国内外の関心が集まっています。
1996年、日米両政府は普天間基地を5年から7年の間に日本に返還することで合意しました。ただし返還は、普天間にかわる代替施設が運用可能になった後とされ、新たに海上ヘリポートを沖縄に設置することになったのです。97年には、沖縄県・名護市辺野古のキャンプ・シュワブ周辺がヘリポート建設地に決まったものの、まずその移設案は、キャンプ・シュワブ周辺の住民や名護市長の反対に遭うことになりました。ようやく名護市と日本政府の間に合意ができたと思った矢先、今度はヘリポート建設に伴う環境問題が浮上し、さらに沖縄県議会が沖縄県内の基地移転に反対するなど、次々と問題が発生、結局、合意から13年たった今でも基地返還は実現されていません。
1996年に普天間基地返還が合意された背景には、その前年に起こった米軍兵士による少女暴行事件がありました。日米地位協定によって犯人の身柄は当初日本側に引き渡されなかったのです。この事件は、米軍兵士による犯罪や米軍の演習による騒音・環境汚染に苦しんできた沖縄住民の不満を一気に爆発させ、大規模な反基地・反米運動が起こりました。日米同盟の根幹を揺るがしかねない事態と判断した日本政府は、基地縮小をアメリカに要請し、厳しい折衝の結果、ようやく96年合意ができあがったのです。
ただ、米軍再編に関する日米合意は、沖縄住民の負担を減らすためだけに出来上がったものではありません。冷戦が終わった後、アメリカも世界戦略を見直す過程で、日米同盟にはどのような意義があり、どのような役割を果たしていくべきか見直す必要があると日米双方が感じていました。国際環境が変わっていく中で、引き続き日本の安全を担保し、かつアメリカの戦略に資するような米軍再編が目指されたのです。
アメリカから見れば、10年以上も前に合意したことを実行に移せない日本政府に不満を感じつつ、沖縄の情勢を理解もしており、日米同盟重視を標榜する自民党には、それなりに辛抱強く接してきたという経緯があります。しかし、米軍再編の見直しや沖縄の米軍基地の県外・国外移転を掲げる民主党には強い懸念を抱き、「96年の合意のとおり、再編実施を進めるべきだ」と鳩山政権にメッセージを送ってきています。
それに対する日本側の対応は、鳩山首相の意思が不明確で問題の早期解決にこだわらない様子であるのに対し、早期解決を目指す北澤防衛相と岡田外相は、代替施設に関する意見が異なるなど、政府首脳の足並みの悪さ、戦略の不明確さを露呈しており、日米両国で鳩山政権の安全保障政策に対する不信が高まっています。96年の合意を見直すとなれば、日米間に軋轢が生じるのは必至ですが、どのような政策を取るにせよ、まず政府としての方針を明確にし、その方針を取る根拠と実現手段について説明することが求められます。
(2009年11月2日掲載。*無断転載禁止)
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